
地中海性気候域の分布図
ヨーロッパ南部沿岸を中心とした黄緑色の領域が地中海性気候域
出典:Photo by LordToran / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0より
ヨーロッパ南部、特にスペインやイタリア、ギリシャといった地域でよく見られる「乾いた夏と温暖な冬」。これは単なる暑さや水不足の話ではなく、気候学的には地中海性気候と呼ばれる特有のパターンなんです。古代ギリシャやローマの時代から、こうした気候は人々の暮らしや文明のあり方に深く関わってきました。では、この「地中海性気候」の正体とは何なのか?その成り立ちと特徴、さらにはこの気候に育まれた文化や風景について、3つの角度からわかりやすくかみ砕いて解説していきます。
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まずは、この気候がどうやって成り立っているのか、自然のメカニズムを見ていきましょう。
夏になると偏西風はヨーロッパの北側へと押し上げられます。すると、南ヨーロッパは乾燥帯に入るような状態となり、まとまった雨が降りにくくなるんです。これが、地中海性気候の最大の特徴でもある「乾いた夏」の原因なんですね。
地中海は大西洋から細長いジブラルタル海峡を通じてつながってはいるものの、ほぼ“内海”といっていいほど閉じられた水域。そのため水温は高くなるものの、蒸発による湿潤な空気が意外と供給されにくいのです。これもまた、夏の乾燥を加速させる一因となっています。
乾いた気候の中でも、たくましく生き抜く植物たちと、それが織りなす独特の風景。これもまた地中海性気候ならではです。
南欧の丘陵地に広がるのは、オリーブやコルクガシといった常緑広葉樹の森。葉を落とさず、表面を硬くすることで水分の蒸発を防ぎ、乾燥に打ち勝っているんですね。その合間にはローズマリーやラベンダーといった灌木も生えていて、香り豊かな景観が広がります。
地中海性気候地域での栽培がさかんなオリーブの木
とくに乾燥のきびしい地域では森林が育ちにくく、かわりに低木林のマキアやさらに背丈の低いガリッグと呼ばれる植生帯が見られます。こうした風景は、スペイン南部やギリシャの島々などでよく見られ、人と自然の距離感が感じられる風土を形づくっています。
最後に、人びとがこの気候にどう順応し、どう文化を育んできたのかを見ていきましょう。
乾燥に強い作物として、オリーブ、ブドウ、小麦の3つは欠かせません。これらは古代から現代に至るまで、南欧の食と経済の基盤となってきました。とりわけ、ワインとオリーブオイルの生産は世界的にも重要で、地中海性気候がもたらす“恵み”の象徴といえるでしょう。
南欧の町並みに共通するのが、白く塗られた壁や細い路地。これは太陽の光を反射し、風通しを良くすることで暑さを和らげる工夫なんです。とくにスペインのアンダルシア地方や、ギリシャのサントリーニ島などでは、こうしたデザインが一種の美学としても根づいています。
このように、地中海性気候というのは、単なる「乾いた夏」ではなく、自然のメカニズムから風景、さらには人々の暮らしや文化にまで浸透している、奥深い気候なんですね。南ヨーロッパの魅力を形づくっている大きな要素のひとつといえるでしょう。
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