ロシア帝国に存在した身分制度とは?

ロシア帝国には西欧に影響を受けた身分制度(sosloviye)が存在しました。その身分とは皇族/貴族/聖職者/名誉市民/商人・町人・職人/カザーク(コサック)/農民/異族民などからなっており、身分によって認められる権利や課せられる義務に差がありました。

 

 

 

各身分の特徴

貴族

ロシア帝国身分制社会の頂点に位置する身分です。一代貴族と世襲貴族があり、世襲貴族になるには多くの場合、何かしらの勲章を得ていることが条件でした。また貴族の中でも伝統的な家柄と勲章を併せ持つ者には公爵・伯爵などの爵位が授けられました。

 

聖職者

公認されたキリスト教の聖職者に与えられた身分です。皇帝への宣誓を義務付けられる代わりに、人頭税や徴兵を免除されていました。

 

名誉市民

ニコライ1世(在位1825年〜1855年)の治世で創設された身分で、資本主義社会の勃興にともない台頭したブルジョワジーに授けられました。商人だけでなく、優れた芸術家なども名誉市民になれました。

 

商人・町人・職人

都市住民の主な身分です。中でも商人はブルジョワジーの一角をなし、ギルドに所属する裕福な者に与えられる、貴族・聖職者に次ぐ第三身分と位置づけられていました。

 

 

 

カザーク(コサック)

国境警備や民衆運動の鎮圧などを生業とする軍事身分です。18歳からの20年間の軍役と引き換えに土地が与えられていました。

 

農民

帝国臣民の大部分を構成する身分です。国有地農民、聖界領農民、、御料地(帝室領)農民、領主農民(農奴)などに分けられていました。人頭税や領主に対する納税の義務を負っていました。

 

農奴制はエカチェリーナ2世(在位1762年〜1796年)の治世で全盛になりましたが、後にアレクサンドル2世(在位1855年〜1881年)が農奴解放令によって廃止しています。

 

異族民

ロシア帝国の異族民とは、シベリア、中央アジア、極東の先住民のことです。帝国の法律から、先住民の伝統的な風俗習慣を保護すべく導入された区分です。しかし「野蛮人」と同義の言葉として使われていた側面もありました。

 

身分制の廃止

2世紀以上帝国社会に定着していた身分制ですが、1917年にロシア革命で帝政が倒れたのち、ソビエト人民委員会議により正式に廃止されました。