西岸海洋性気候の名前の由来

コーンウォールのリアス式海岸・バセット湾
複雑に入り組んだ地形が特徴のコーンウォール・リアス式海岸をとらえた風景。
西岸海洋性気候の影響で年間を通じて温暖多湿な環境にあるイギリス南西部に位置している。

出典:Photo by Tony Atkin / Wikimedia Commons CC BY-SA 2.0より

 

 

ヨーロッパの気候のなかでもとくに広く分布し、私たちの暮らしにもじわじわと影響している西岸海洋性気候。でも、よく考えるとちょっと変わった名前ですよね?「西岸」「海洋性」ってなに?どうしてそんな名前になったの?──今回は、この気候の名前に隠された意味と、その由来をひもといていきます。

 

 

「西岸」の由来

まずは「西岸」という言葉から見ていきましょう。

 

大陸の西側に多く分布する

西岸海洋性気候は、文字通り大陸の西側の海沿いに位置する地域に多く見られます。たとえばヨーロッパならイギリス、フランス西部、オランダ、ドイツ西部などが代表例。南北アメリカやオーストラリアでも、太平洋や大西洋に面した「西側」がこの気候を持つ傾向にあるんです。

 

偏西風の影響を強く受ける場所

これらの「西岸」に共通するのが、上空を吹く偏西風の存在。海からの湿った空気を西から東へ運んでくれるので、まさに「西の海岸沿い」にその影響が集中する──だから「西岸」という言葉が付けられているんですね。

 

「海洋性」の由来

次は「海洋性」という部分に注目してみましょう。

 

海の影響で気温がマイルド

海洋性というのは、海のぬくもりや湿気が気候に大きく影響していることを意味します。海は気温の変化がゆっくりなので、その隣にある地域も「夏は涼しく、冬は暖かい」というおだやかな気温になるわけです。これは内陸部の「大陸性気候」との大きな違いでもあります。

 

年間を通じて降水が安定

また、海洋性の気候では雨が一年中まんべんなく降るのも特徴のひとつ。大西洋からやってくる湿った空気が安定的に届くおかげで、季節による乾湿の差が小さく、しっとりした気候が続くんです。

 

分類名の由来

西岸海洋性気候の名前の意味がわかってきたところで、その気候分類の由来についても見ておきましょう。

 

ケッペンの気候区分では「Cfb」

西岸海洋性気候は、ドイツの気候学者ウラジミール・ケッペンが提唱した「ケッペンの気候区分」でCfbという記号で表されます。Cは温帯、fは年中降水があること、bは夏があまり暑くないことを示しているんです。

 

他の海洋性気候との違いもある

同じ「海洋性」と名のつく気候でも、例えば南半球のチリ中部やニュージーランド南部は気温パターンが微妙に違ったりします。あくまで「西岸の温帯地域にある海洋性気候」ということで、この名前がつけられているわけです。

 

「西岸海洋性気候」という名前には、じつはそのまんまの意味が込められているんです。大陸の“西のはしっこ”で、海のぬくもりと風の流れに包まれながら暮らす──そんな地域だからこそ、こう呼ばれているわけですね。