ケルスス(前25年頃 - 後50年頃)は古代ローマの医学者で、食事療法・病理・薬学・外科呪術などを扱った『医学論』の著者として知られる人物です。同著書には「ヒポクラテスは医学を哲学から分離した」という有名な評論が記載され、古代ギリシア・ローマ時代の医学の知見を知る上で、『ヒポクラテス全集』にも並ぶ重要な史料となっています。彼は観察を重視し、「発熱」を体内に宿る病的なもの(つまりウイルス)を外に出すための生理作用であると見抜いていました。
『ヒポクラテス全集』とも並び称されるケルススの代表作『医学論』(全8巻)では、食事療法、薬学、外科的治療について触れられており、序文では動物実験と人体実験の是非について語るなど倫理的な規範についても問題を提起しています。「健康な人の身体の動きをしっかり把握し、そこから外れた患者の身体状態を元に戻す」とし、「炎症」を発赤・腫れ・熱・痛みという4つの特徴を併せ持つものと定めています。
『医学論』は、アレクサンドリアおよび古代ギリシアの医学知識を知る上で貴重な史料となっています。5世紀に教皇ニコラウス5世により発見され、ルネサンス期に再評価され、出版されたことで、当時にして最も読まれた医学書の一つとなりました。
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