



フランスの国旗といえば、ひと目で分かる青・白・赤の三色旗。世界でもとくに知名度の高い国旗のひとつですよね。
ですが、この配色は単に「目立つから選ばれた」わけではありません。そこには、フランスが歩んできた歴史、革命の記憶、そして国民としての意識が、しっかりと刻み込まれています。
国旗の色は、その国が何を大切にしてきたかを語る、いわば“無言のメッセージ”。
フランスの三色旗もまた、激動の時代の中で生まれ、意味を積み重ねてきました。
青・白・赤の三色は、フランスという国家の成り立ちと価値観を象徴する色──そう考えると、この国旗の見え方も少し変わってくるはずです。
では、それぞれの色にはどのような由来と意味が込められているのでしょうか。
以下では、フランス国旗の成立の背景と、三色に託された想いを順に解説していきます。
|
|
|
|
|
|

フランス革命の引き金となったバスティーユ牢獄襲撃事件
フランスの国旗、通称「トリコロール」は、1789年のフランス革命という激動の時代に誕生しました。
この三色旗は、革命の中心地だったパリ市民を象徴する青と赤、そして王家を象徴する白を組み合わせたデザインです。対立していた存在の色を、あえて一つにまとめたところが、この国旗のいちばん象徴的なポイントと言えるでしょう。
革命によって生まれ変わろうとする国家の姿を、色で表現したもの──それが、トリコロールです。
この配色には、単なる装飾以上の意味が込められており、フランス国民の意識と深く結びついてきました。
フランス国旗の青・白・赤には、それぞれ明確な象徴性があります。
青は自由と平等、白は平和と純粋さ、赤は友愛と勇気を表すとされています。
これら三色は、革命によって掲げられた理念を、視覚的に一つへまとめたものです。
色を見るだけで、革命の精神や国民としての誇りが想起される──そんな役割を、この国旗は担ってきました。
現代のフランスにおいても、トリコロールは国家のアイデンティティと民主主義を象徴する存在です。
革命のスローガンとして知られる「自由・平等・友愛」は、今なお国の根幹を成す価値観として、この三色に託されています。
トリコロールは、革命の記憶と現代フランスの価値観を同時に背負い続ける象徴──そう考えると、この国旗が持つ重みも、よりはっきりと感じられるはずです。
国際舞台に掲げられるたび、フランスがどんな国であろうとしてきたのかを語り続けている。
それが、フランス国旗トリコロールの本質なのです。
|
|
|
フランス国旗、通称「トリコロール」は、青・白・赤の三色によって、フランスという国家の変化を映し出してきました。
革命の理想、王政への回帰、帝政、そして共和政へ──国旗の変遷をたどることは、そのままフランス史の流れを追うことでもあります。ここでは、その変化を時代ごとに整理してみましょう。
フランス革命以前、王国の旗として用いられていたのは、ほぼ白一色の旗でした。
この白は、ブルボン王家を象徴する色であり、王権とカトリック的秩序を示すものでもあります。
つまり当時の国旗は、「国家=王家」という価値観をそのまま視覚化した存在だったのです。
1789年、革命が始まると状況は一変します。革命派の象徴として採用されたのが、青と赤──これはパリ市の色でした。
そして1790年、ラファイエット侯爵の提案によって、王家を象徴する白が中央に加えられ、現在につながるトリコロールが誕生します。
革命の色と王家の色をあえて並べた点には、「対立の克服」や「新しい国家像」への期待が込められていました。 トリコロールは、断絶ではなく「再構成」を目指した革命の象徴だったのです。
ナポレオンが皇帝となった後も、トリコロールは国旗として使われ続けました。
配色の比率や細部の扱いに変化はあったものの、三色旗そのものは維持され、革命の遺産が帝国体制にも引き継がれていきます。
体制が変わっても、国旗は変えなかった──この点は、ナポレオンが革命の正統な継承者であることを示そうとした姿勢とも読み取れます。
ナポレオン失脚後、ブルボン家が復位すると、国旗は再び白旗へと戻されます。
しかしこの回帰は長くは続きませんでした。1830年の七月革命によってルイ・フィリップが即位すると、トリコロールが再び国旗として復活します。
この時点で、三色旗は「革命の象徴」から「国民の旗」へと性格を変えたと言えるでしょう。
ナポレオン三世による第二帝政期も、トリコロールは引き続き使用されました。
王政復古が完全には支持されなくなった時代背景の中で、三色旗はすでに広く国民に受け入れられていたのです。
1870年、第三共和政が成立すると、トリコロールは正式にフランスの国旗として定着します。
以降、細かな色調の変更などはあったものの、基本デザインは現在まで変わっていません。
革命・帝政・共和政という激しい政体の変化を超えて残ったことこそが、トリコロールの最大の特徴です。
それは単なる旗ではなく、フランスという国家が積み重ねてきた選択の記録でもあるのです。
フランスの国旗は、その色とデザインそのものが、国の歩んできた歴史と民族的アイデンティティを静かに語っています。青・白・赤の三色は、単なる配色ではなく、革命という大きな転換点を経て形づくられた、フランスという国家の記憶そのものです。
王政から革命へ、そして民主主義へと移り変わってきたフランスの選択が、この一枚の旗に凝縮されている──そう言っても過言ではありません。
国旗は過去を飾るものではなく、今もなお価値観を示し続ける存在なのです。
トリコロールは、革命の精神と民主主義の理念を現在へとつなぐ、生きた国家の象徴。
掲げられるたびに、フランスが何を大切にしてきたのかを思い出させてくれる。
それこそが、この国旗が国民にとって特別な意味を持ち続けている理由なのです。
|
|
|