「医学の父」と称されるヒポクラテス
病院も科学的な薬もワクチンも存在しなかった古代社会においては、「治療」といえば死の恐怖から逃れるための、「祈祷」や「魔除け」などといった宗教的な性格の強いものでした。しかし前5世紀以降、病を全て神や悪魔のせいにするのではなく、人間の身体を取り巻く自然・環境に起因するものという自然科学的な考え方が登場します。その旗手的な人物が「医学の祖」と呼ばれるヒポクラテスです。
ヒポクラテスは人体は四体液からなるとする体液論を掲げ、体液の調和が保たれている状態が健康であり、不調和な状態を病気としました。そして臨床の観察と経験を重視して作り上げた「ヒポクラテス全集」は、薬物療法や解剖学、外科などを扱っており、科学的医学の基礎として近代まで医学に大きな影響を与えました。
なお古代ギリシア人が病気に対する宗教的な見方から脱却できたのは、ヒポクラテスの登場以前にソクラテス、プラトン、アリストテレスといった哲学者が、論理的思考や学術的知識を重視する風潮を作り出したことも大きく関係しています。
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