ステップ気候と砂漠気候の違い

ステップ気候と砂漠気候の違い

ステップ気候は砂漠気候より降水量が多く、一定の植生が存在するが砂漠は極度の乾燥地域である。本ページでは、このような地理的要因やその影響についてさらに詳しく掘り下げていく。

ステップ気候と砂漠気候の違い

ウクライナの草原(ユーラシアステップ)
ウクライナ南部に広がる草原地帯は典型的なステップ気候域で,広大な平野にチェルノーゼム土壌と草本植生が展開する

出典:Photo by Michaila vnuk at Ukrainian Wikipedia / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0より


ステップ気候と砂漠気候──どちらも乾燥した土地に見えるけど、実はその「乾き具合」や「暮らしやすさ」、そしてそこに根づいた文化には決定的な違いがあるんです。ヨーロッパではステップ気候が東部や南東部に広がる一方、砂漠気候はほとんど見られませんが、南地中海沿岸や周辺地域との関係の中で、両者を比較する意義はとても大きい。今回は、このふたつの乾燥気候の違いを、ヨーロッパの視点から文化・歴史を絡めてわかりやすくかみ砕いて解説していきます。



降水量と気温の違い

まずは一番基本となる、年間の雨の量や気温の傾向からふたつの気候の違いを見ていきましょう。


ステップは年に250~500mmの降水

ステップ気候は、乾燥しているとはいえ年間250~500mm程度の雨が降ります。しかも春や秋にある程度まんべんなく降るので、丈の低い草が育ち、牧畜などの生業が成立しやすいんです。寒暖差も大きく、夏は暑く、冬はしっかり冷えます。


砂漠は年に250mm未満の極端な乾燥

砂漠気候年間降水量が250mm未満で、しかもほとんど雨が降らない年も珍しくありません。日中は灼熱、夜は極寒という激しい気温差も特徴で、生物の生存自体が難しい過酷な環境といえます。ヨーロッパには直接の砂漠は少ないですが、スペイン南東部の一部などにはその兆しが見られます。


植生と地形の違い

次に、実際にその土地に立ったときの風景──地表を覆う草や岩、土壌の状態を比較してみましょう。


ステップには草原が広がる

ステップ地帯は丈の低い草(多年草)が一面に生い茂る大草原。これは放牧にとても向いていて、ウクライナの草原地帯(プーチャ)などでは、昔から馬や羊などの遊牧文化が栄えてきました。土地はやや痩せていて農耕には難しいけど、乾燥地の中では比較的恵まれた環境です。


砂漠は植物もほとんど育たない

砂漠では草も木もほとんど育たないため、風景は砂や岩の無機質な広がり。場所によってはオアシス周辺にナツメヤシやアカシアが見られる程度で、基本的には裸の大地。しかも表面の土壌も水を保持できず、植生の回復もほとんど見込めません。


文化と人間活動の違い

最後に、こうした自然条件の違いが、人びとの暮らしや歴史、文化にどんな違いを生んできたのかを見てみましょう。


ステップでは騎馬と遊牧文化が根づいた

ステップでは草を求めて移動する遊牧民が誕生し、フン族やマジャール人、モンゴル系諸民族が騎馬を駆ってヨーロッパに大きなインパクトを与えました。これらの民は、柔軟に土地を移動しながらも、軍事力と交易力を武器に文明の接点を築いてきたのです。


砂漠ではオアシスと交易が命綱

砂漠では、限られたオアシスを拠点に生活が行われ、キャラバン(隊商)による交易活動が文化の中心でした。アフリカ北部~中東地域ではこのような砂漠の民のネットワークが発達し、ヨーロッパともつながっていきます。たとえば地中海交易では、砂漠を越えた香辛料や金などが運ばれ、ルネサンス経済にも影響を与えたのです。


ステップ気候と砂漠気候、どちらも「乾燥地帯」に分類されるけれど、その中身はまったく別物。ステップは人と家畜の共存が可能な草原地帯、砂漠は生命すらまばらな極限環境。だからこそ、それぞれが育んできた文化も、人びとの生き方も、大きく異なっているのです。