
産業革命期「ラッダイト運動」を描いたイラスト
機械の導入で仕事を失うことを恐れた手工業者・労働者による機械打ち壊し運動であった。
産業革命って、18世紀後半から19世紀にかけて起こった、まさに歴史の大転換期なんです。技術が一気に進んで、工場がどんどん建って、物が大量に作れるようになったことで、社会のしくみもガラリと変わりました。
たとえば、交通が便利になったり、暮らしが豊かになったり、自由に使える時間が増えたり……いいこともたくさんあったんです。でもその一方で、資本家と労働者のあいだで格差が広がったり、労働環境がひどくなったり、自然がどんどん壊されたりと、見過ごせない問題も山積みでした。
植民地争いが激化したり、社会の分断が進んだりといった影響も、産業革命がもたらした一面なんですよね。このページでは、そんな産業革命のメリットとデメリットについて、もう少し踏み込んで見ていきたいと思います。
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産業革命のメリットとしては
などが挙げられます。以下で詳しく解説していきます。
産業革命では、蒸気機関の導入や機械化が一気に進んだことで、それまで手作業だった生産のあり方が大きく変わりました。作業の効率が飛躍的に上がり、同じ時間でたくさんの製品を作れるようになったんです。その結果、製品の価格も下がって、多くの人が手にしやすくなりました。経済全体が活性化し、新しい産業が次々と生まれ、雇用の場も広がっていきました。
蒸気機関の図解
産業革命期に使われた大気圧式蒸気機関(Newcomenモデル)の図解。機械化の先駆けとして、坑内の排水や工場稼働に活用された。
出典:Photo by Robert Henry Thurston / Wikipedia commons Public Domainより
大量生産によって、食料や日用品などが安定して供給されるようになり、市場にはたくさんの商品が並ぶようになりました。それによって、多くの家庭で暮らし向きが改善され、これまで手の届かなかった物も手軽に手に入るようになったんです。衣類や家具といった生活必需品も普及が進み、暮らしにゆとりや楽しみが生まれていきました。
鉄道や蒸気船の登場で、移動にかかる時間や費用がグッと抑えられ、人々が気軽に遠出できるようになりました。旅行や観光が一般の人にも広まり、文化や娯楽の幅が広がっていったんです。また、通勤がスムーズになったことで、都市と郊外を行き来するライフスタイルも定着し、地域間のつながりや経済交流も活発になっていきました。
ベン・キャンベル蒸汽船
19世紀半ば、蒸気が動力の蒸汽船は産業革命の象徴となり、河川や湖での物資・人員の機械化輸送を加速した
出典:Photo by Unknown / Wikipedia commons Public Domainより
上記の様な大きなメリットがあった産業革命ですが、同時に
などの大きなデメリットも生じていました。以下で詳しく見て行きましょう。
産業革命によって、資本家たちは莫大な利益を手にするようになりましたが、その裏で、労働者たちは過酷な環境と低賃金に苦しむこととなりました。このような不平等な構造が経済格差を一気に広げ、階級間の緊張も高まっていきます。とくに工業都市では、貧しい人々が急増し、住環境も悪化していくなど、深刻な社会問題へと発展していきました。
シカゴ労働新聞に掲載された風刺画(1894年)
資本家が労働者を“低賃金”と“高い家賃”で圧縮する様子を描いている
産業革命後の世界に蔓延した格差拡大を強烈に描いてる
出典:Chicago Labor Newspaper / Wikipedia commons Public Domainより
当時の工場や炭鉱では、労働者が長時間労働を強いられるのが当たり前で、働き手の健康や安全が十分に守られることはほとんどありませんでした。とくに問題視されたのが児童労働です。子どもたちは危険な場所で、大人顔負けの過酷な仕事をさせられ、教育の機会すら奪われていました。こうした現実が、労働条件の改善を求める声を高めていくきっかけとなったのです。
炭坑でコールタブを引く少年(19世紀中頃)
若い“drawer”が石炭運搬車(coal tub)を狭い坑内で引いており、児童労働の重労働ぶりを象徴する図
出典:Victorian 拷問調査報告委員会報告より / Wikimedia Commons Public Domainより
産業革命では石炭が主なエネルギー源として使われていたため、都市部では煙やすすによる大気汚染が深刻な問題になっていきました。空気はよどみ、住民のあいだでは呼吸器系の病気が広がっていきます。こうした環境への悪影響は、のちの環境保護運動や政策の必要性を強く意識させることになりました。
ウィドネス化学工業地帯の大気汚染(19世紀末)
英国グレーター・マンチェスター近郊ウィドネスで、化学工業によって黒煙が空を覆いつくす様子。
出典:Hardie, D.?W.?F. / Wikimedia?Commons Public Domainより
ヨーロッパ各国は、工業化によって必要になった原材料や販路を確保するため、こぞってアジア・アフリカ・アメリカなどの地域に進出し、植民地化を進めました。この競争は、列強の間で緊張を生むだけでなく、現地の人々にとっても抑圧と支配の日々をもたらすことになります。こうした動きが、のちの国際情勢に大きな影響を与えていくのです。
アフリカを舞台にした植民地獲得競争を示す地図(1880-1913)
1880年には独立王国が多かったアフリカが、1913年には欧州列強によって「分割」され植民地支配下に置かれた様子を視覚的に示している
出典:Somebody500 / Wikimedia Commons CCBY-SA4.0より
一部の資本家に富が集中する一方で、多くの労働者が困窮していたことから、「このままでいいのか」という疑問が広がり、社会主義の思想が各地で根付いていきます。資本主義への批判や、平等な社会を求める運動が力を持つようになり、やがて政治や労働のあり方そのものを揺るがす大きなうねりへとつながっていきました。社会の分断と対立は、この時代の影の側面ともいえるでしょう。
搾取構造を示すピラミッド(1911)
労働者が頂点の諸階級を支える構図で描き、社会主義・労働運動の必要性を訴える反資本主義的イラスト
出典:Industrial Worker(IWW)/ PILパブリックドメインより
メリット |
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デメリット |
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産業革命は、まさに現代社会の土台をつくった歴史的な大転換でした。技術の進歩によって生活は格段に便利になり、豊かさを実感できるようになった一方で、その裏には深刻な社会問題や環境問題も数多く存在していたんです。
資本家と労働者とのあいだに広がった格差や、劣悪な労働環境、そして石炭をはじめとするエネルギー利用による大気汚染。さらには、世界中での植民地争いの激化や、社会の分断といった問題も、すべて産業革命と深くつながっていました。
そう考えると、産業革命は「進歩」の象徴であると同時に、「課題の出発点」でもあったと言えるかもしれません。私たちがこれから目指すべき持続可能で公正な社会のかたちを考えるうえでも、この時代の経験から学べることはとても多いはずです。
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