ルーマニア音楽の特徴と歴史

ここでは、ルーマニア人の音楽について簡単に取り上げます。

 

ルーマニアは、その歴史の中で多様な民族が入り混じって形成されてきた国家です。現在のルーマニア国土には、険しい山々が連なる山脈もあれば、なだらかな平野も、黒海に面する海岸地域もあります。

 

民族としても環境としてもバラエティに富んだこの場所で、音楽もまた、さまざまに発展を遂げてきました。

 

 

民謡「ドイナ」

ルーマニア民謡は、総称して「ドイナ」と呼ばれ、ユネスコの無形文化遺産にも登録されています。

 

その始まりは定かではありませんが、ルーマニアの民俗音楽を積極的に収集して研究していたハンガリーの音楽家バルトークによれば、ドイナにはトルコやアラビアの音楽文化とよく似た部分があるようなので、その地方から伝来したものが発展していった可能性があります。

 

ドイナは自由なリズムで、即興で演奏されるものが多く、地域ごとに独特の発声方法や伴奏のパターンがあります。伴奏には基本的にどんな楽器を使ってもよく、場合によってはその場で用意した木の葉笛で伴奏することもあるようです。

 

テーマも恋愛から酒盛り、はたまた自然や神への祈りまで何でもありですが、基本的に叙情的な歌詞で、自分の思いの丈を切々と歌い上げるような内容です。

 

20世紀まで、ドイナはルーマニア各地の農村でほぼ唯一の音楽として親しまれてきましたが、現在ではその伝統は急速に失われつつあります。

 

伝統楽器

ルーマニアの楽器の一つに、「ブシウム」と呼ばれる木製の長いラッパがあります。おもに丘陵地帯で羊の放牧をしていた人たちが、お互いや羊たちに対して合図を送るために使っていたようで、唇の振動で音程を作ります。

 

「ティリンカ」という笛も同じく木製の笛で、指孔もないただの筒ですが、指で開口部の大きさを調整したり吹き込む息の強さを調整したりすることで、音階をつくります。

 

また、ロマ人たちが持ち込んだとされるツィンバロムや、バグパイプの仲間であるチンポイなども用いられます。

 

有名な楽曲

バルトーク『ルーマニア民俗舞曲』

トランシルヴァニアの民謡を題材に、バルトークがピアノ曲として作曲し、のちに管弦楽曲にも編曲した曲。