



ドイツの国鳥シュバシコウ
中央ヨーロッパに位置し、深い森や広い草原、さらにはアルプスの山々にまで自然が広がるドイツ。
その多様な環境の中で、たくさんの動物たちが、目立たぬように、けれど確かに生きています。
森を駆け抜けるシカやキツネ。空を横切る渡り鳥たち。
そして街のすぐそばで、人の暮らしと折り合いをつけながら生きる小動物たち──彼らの存在は、ドイツという国の「もう一つの表情」をそっと教えてくれます。
自然と人の生活が重なり合う場所にこそ、ドイツの動物たちの姿があります。
手つかずの大自然だけでなく、人の営みのすぐ隣にも、命の気配が息づいているんですね。
今回は、ドイツの動物たちを「自然」「文化」「代表的な動物」という三つの視点から、できるだけわかりやすく、かみ砕いて紹介していきます。
身近だけれど、意外と知られていない。そんなドイツの動物の世界を、一緒にのぞいてみましょう。
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多くの野生動物が暮らすシュヴァルツヴァルトの森(ドイツ南西部)
山岳地帯から深い森、なだらかな草原、川を経て海へ。
ドイツの地形はとても変化に富んでいて、そのぶん動物たちにとっても、実に多彩な生息環境が用意されています。
ドイツには、バイエルンの森やシュヴァルツヴァルト(黒い森)といった、広大で奥深い森林が今も残されています。
ここは、シカやイノシシ、アカギツネなどが暮らす、野生動物の本拠地。
人の気配が薄れると、森は一気に表情を変えます。 静けさの中で動き出す、野生の時間。そんな感覚が、ごく当たり前のように存在しているのが、ドイツの森なんですね。
人の生活圏のすぐ隣に、本格的な野生が残されている。
これが、ドイツの自然環境の大きな特徴です。
北部や東部に広がる平原や農地では、また違った動物たちが主役になります。
よく見られるのは、ノウサギやキジ、そして空を舞うタカ類。
この地域の特徴は、農業と野生動物の距離がとても近いこと。
畑や牧草地のすぐそばに、動物たちの生活圏が自然に重なっています。 人と動物の境界があいまいな環境が、今も保たれているのです。
ドイツは、多くの渡り鳥が行き交う中継地点としても知られています。
春と秋になると、シュバシコウやカモ、ガンといった鳥たちが、各地の湿地に姿を現します。
とくにライン川流域や北部の干潟は、国際的にも重要な生息地。
水辺の環境が豊かだからこそ、鳥たちは安心して羽を休めることができるんですね。
こうして見ていくと、ドイツの自然は決して一様ではありません。
場所ごとに異なる顔を持ち、その分だけ、多様な命が静かに息づいているのです。
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ブレーメンの音楽隊像(ブレーメン市庁舎横)
グリム童話の動物たち(ロバ、イヌ、ネコ、ニワトリ)が、都市の記憶として像になっている。
ドイツで動物が文化として根付いていることが伺える。
出典:『Bremer Stadtmusikanten』-Photo by Magnus Manske / Wikimedia Commons CC BY 1.0
ドイツでは、動物は単なる自然の一部ではありません。
神話や物語の中で語られ、日々の暮らしの中でも意識される、身近で大切な存在として位置づけられています。
『ブレーメンの音楽隊』や『狼と七匹の子ヤギ』など、グリム童話には動物たちが数多く登場します。
そこに描かれる彼らは、ただの脇役ではありません。
ときには知恵を働かせ、ときには人間のような感情を見せながら、物語を前へ進めていきます。 動物を通して、社会のルールや生き方を伝える──そんな役割を、昔から担ってきたのです。
物語の中の動物は、自然と人をつなぐ案内役でもありました。
現代のドイツでも、動物を大切にする姿勢ははっきりと見て取れます。
動物愛護に関する法律は非常に整備されており、ペットの飼育環境や動物園の管理にも、厳しい基準が設けられています。
さらに、学校教育の中でも動物との共生をテーマにした取り組みが行われ、子どもの頃から命について考える機会が用意されています。
動物を「かわいがる対象」ではなく、「尊重すべき存在」として学ぶ文化があるんですね。
農村部では、放牧や家庭飼育の文化が今も息づいています。
犬や猫はもちろん、ヤギやニワトリが人の生活のすぐそばにいる光景も、決して珍しくありません。
一方、都市部でもリスやハリネズミ、コウモリといった小動物が自然に暮らしています。 人間社会のすぐ隣で、動物たちが静かに生きている──そんな関係性が、ごく当たり前のものとして受け入れられているのです。
こうして見ると、ドイツの動物文化は、昔話から現代社会まで一本の線でつながっています。
人と動物が、無理のない距離感で共に暮らす。その姿勢こそが、ドイツらしさなのかもしれませんね。
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それではここから、ドイツの自然や文化を象徴する、代表的な動物たちを見ていきましょう。
どれも、風景や物語の中でおなじみの存在ばかりです。

ドイツの国鳥シュバシコウ
白い羽と黒い風切羽、長い赤いくちばしが特徴の大型の鳥
出典:『Sandtorfer Aecker-Mannheim-Sandhofen--Weissstorch』-Photo by Andreas Eichler/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0
長い脚と赤いくちばしがひときわ目を引く、ドイツの国鳥。
このコウノトリは、ドイツでは「赤ちゃんを運んでくる鳥」として知られています。
春になると南から戻り、教会の屋根や民家の煙突に巣を作る姿が各地で見られます。 シュバシコウの帰還は、ドイツに春が来たことを告げる合図。
地域によっては保護区も整備され、地元の人たちに大切に守られている存在です。

ドイツの森林に佇むアカシカ(雄)
枝分かれした角と力強い体つきが特徴。
森や草地の生態系を象徴する大型草食獣。
出典:『Rothirsch』-Photo by Heinz Seehagel/Wikimedia Commons Public domain
ドイツの深い森を象徴する、大型の草食動物がアカシカ。
とくに秋の繁殖期には、雄同士が角をぶつけ合う「ラッティング」が見られ、森の奥に低い唸り声が響き渡ります。
狩猟文化とも深く結びついており、自然保護と生態系管理のバランスは、今も議論の対象。
人と野生動物の関係を考えさせてくれる存在でもあります。

ドイツ(ヘッセン州)のイノシシ
ドイツの森や郊外でも見られる大型の野生動物。
ずんぐりした体格と長い鼻先が特徴で、森林生態系の一員。
出典:『Wild boar (Sus scrofa)』-Photo by Bramans/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0
森と農地を自由に行き来する、非常に適応力の高い野生動物。
ドイツでは個体数が増え、都市部に姿を現すこともあり、野生動物との距離感が現代的な課題になっています。
一方で、古くからジビエ料理として利用されてきた動物でもあり、 人の暮らしと切り離せない存在として、長い歴史を持っています。

フルダタール(ドイツ・ヘッセン州)のヨーロッパヤマネ
夜行性で木登りが得意なげっ歯類。冬眠に備えて脂肪を蓄える。
出典:『Siebenschlaefer im Fudatal bei Kassel -Germany 2019』-Photo by Unim0g KS/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0
まんまるの大きな目と、ふさふさの尾が印象的な小動物。
夜行性で、木のうろや巣箱にひっそりと暮らしています。
秋になると、どんぐりや果実をたっぷり食べて冬眠の準備。
その愛らしい姿から、ドイツでは童話や絵本のモチーフとしても親しまれてきました。
大きな動物から小さな生きものまで。
ドイツの自然は、多様な命が折り重なって形づくられている──そんなことを、これらの動物たちが教えてくれますね。
以上のように、森と人、そして動物たちが無理のない距離で共に生きている国──それがドイツなのかもしれません。
深い森の奥だけでなく、畑のそばや街の縁にも、静かに息づく命の気配があります。
人の暮らしのすぐ隣に野生が残されていること。
それこそが、ドイツの自然と文化を語るうえで欠かせないポイントです。
自然を守ることと、共に生きること。
その両立を当たり前のものとして受け入れてきたからこそ、動物たちは今もこの国で居場所を失わずにいられるのでしょう。
豊かな自然に支えられ、多様な生きものが織りなす風景。
そこから浮かび上がってくるのは、ドイツという国の、もうひとつの静かな魅力なのです。
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