トルコに暮らす動物たち

ユーラシアの交差点、トルコ。アジアとヨーロッパの境界に位置するこの国は、自然環境も文化もじつに多層的で、その分だけ動物たちの世界も驚くほど多彩なんです。乾燥地帯を駆ける野生動物、都市の路地裏に暮らす猫たち、そして高原地帯に根づいた牧畜文化──動物と人の暮らしが交錯するそのありようは、トルコという国の奥深さを物語っています。このページでは、そんなトルコの動物たちを「自然」「文化」「代表動物」の3つの視点から、わかりやすくかみ砕いて解説していきます。

 

 

トルコの自然と生態系

東西南北で大きく環境が異なるトルコでは、それぞれの気候や地形に応じた多彩な生き物たちが暮らしています。

 

アナトリア高原と乾燥地帯

中央部のアナトリア高原は標高が高く、乾燥した大地が広がるステップ地帯。ここではノウサギキツネ、さまざまな爬虫類が生息しています。人の手があまり入っていないため、野生のバランスがいまだに保たれている貴重な場所なんです。

 

黒海沿岸の温帯多雨林

北部の黒海沿岸は、意外にも日本のように雨が多く、広葉樹の森が広がっています。ここにはクマオオカミなどの大型哺乳類も確認されており、まさに秘境のような生態系が息づいているんです。

 

湿地と湖沼の渡り鳥ルート

トルコはアフリカ・ヨーロッパ・アジアを結ぶ渡り鳥の十字路。メルスィン湾やバン湖などの水辺には、春と秋に数百万羽の水鳥や猛禽類が立ち寄ります。そのため、トルコは国際的にも重要なバードウォッチングの名所として知られているんです。

 

トルコにおける動物文化

自然環境だけでなく、人びとの暮らしや信仰の中にも、動物は深く根づいています。

 

猫と共にある都市文化

トルコといえば猫の国。イスタンブールを歩けば、あちこちでくつろぐ猫たちの姿に出会います。これにはイスラーム文化の影響もあり、預言者ムハンマドが猫を大切にしていたという逸話が、猫への優しさを育んできた背景なんですね。

 

遊牧と牧畜の伝統

中央アナトリアや東部では、今も羊や山羊、ラクダを連れて移動する遊牧民の文化が残っています。季節ごとに移動するこうした暮らしの中で、動物は生活の柱として存在し、人びとの時間感覚や価値観にも深く関わっているんです。

 

動物と神話・民族信仰

トルコには、さまざまな神話や民話の中に動物が登場します。たとえば青い目の猫は「聖なる存在」として語られたり、民族の祖として象徴化されることも。また、ヒッタイトや古代アナトリア文明にも動物の意匠が多く見られます。

 

トルコに暮らす有名な動物

では、トルコの自然や文化を象徴する代表的な動物たちを紹介していきましょう。

 

ターキッシュアンゴラ

トルコの国宝「ターキッシュアンゴラ」

 

真っ白な毛並みにスラリとした体、青い目やオッドアイを持つ個体も多いこの猫は、世界的に有名なトルコの誇り。起源は古く、アナトリアの山岳地帯で自然発生したといわれています。かつてはオスマン帝国の宮廷でも愛され、現在では国の保護種として大切に育てられているんです。

 

カンガール・シープドッグ

がっしりとした体と頼れるまなざし──カンガール犬は、トルコ原産の牧羊犬で、オオカミや盗賊から家畜を守る役割を果たしてきました。番犬としての忠誠心と、人間との信頼関係において世界的にも評価が高く、現在では輸出禁止となっているほどなんです。

 

アナトリアヒョウ

かつてトルコ各地に生息していたアナトリアヒョウは、長らく絶滅したと考えられていましたが、近年になって東部の山岳地帯で再発見され、保護の対象となっています。トルコの自然回復の象徴として、今後が注目されている動物なんです。

 

トルコという国の奥深さは、こうして動物たちを見つめることで、よりくっきりと浮かび上がってくる気がします。人と自然、そして歴史と動物が織りなすハーモニー──それがトルコの魅力なんですね。