
山岳地帯と古都が多いオーストリアは、アルプスを望む要塞や、ハプスブルク家ゆかりの壮麗な宮殿の宝庫です。中世にはハンガリーやオスマン帝国との国境防衛の要所として、近世以降は貴族や皇帝の居城として、数多くの城が築かれました。その建築様式もロマネスクからバロックまで幅広く、まるで時代ごとの「建築博物館」のよう。この記事では、そんなオーストリア各地に残る有名な城を、地域ごとに紹介します。
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ウィーンは、ハプスブルク帝国の政治・文化・芸術の中心として栄え、皇帝の居城や豪華な宮殿が集まる街です。それぞれの建物が帝国の栄華を物語り、現在も世界中から観光客を惹きつけています。
マリア・テレジア(1717 - 1780)が愛用した夏の離宮で、バロック様式を基調とした壮麗な建築と広大な庭園が特徴です。内部は金色の装飾や華やかな壁画で彩られ、庭園はユネスコ世界遺産にも登録されています。宮殿内外で開かれる音楽会や季節のイベントも人気です。
ハプスブルク家の冬の居城として歴代皇帝が政務と日常生活を送った場所。中世から近代にかけて増築が重ねられ、ゴシック、バロック、新古典主義など多様な建築様式が融合しています。現在はオーストリア大統領府や博物館群として利用され、「皇妃エリザベート(シシィ)」の愛用品も展示されています。
名将プリンツ・オイゲンのために建てられた華やかなバロック宮殿で、上宮と下宮の二棟から構成されます。内部は美術館として開放され、クリムトの『接吻』をはじめ、オーストリアを代表する名画の数々が展示されています。庭園の整然とした造形美も必見です。
西部オーストリアには、アルプス山脈の麓や渓谷沿いに築かれた堅牢な城が数多く残っています。これらは単なる防衛施設にとどまらず、地域の歴史や文化の象徴として今も人々を魅了しています。
11世紀、当時の大司教によって建設された要塞で、ヨーロッパでも最大規模かつ保存状態の良さで知られます。高台からはザルツブルクの旧市街と周囲の山並みを一望でき、内部には中世の生活や武具を展示する博物館もあります。
イン川を見下ろす戦略的な高台に位置し、オスマン帝国やバイエルンからの侵攻に備える防衛拠点として活躍しました。頑丈な石造の城壁と塔が印象的で、現在は歴史展示や文化イベントの会場として利用されています。
標高の高い山上に築かれた中世の城塞で、敵の侵入を防ぐための堅牢な造りが特徴です。映画『鷲は舞い降りた』のロケ地としても有名で、城内ツアーや鷹匠ショーなど観光アクティビティも楽しめます。
南部オーストリアはイタリアやスロベニア国境に近く、交易や軍事の拠点として栄えた城が多く残っています。多文化が交差する地域ならではの建築様式や装飾が見られるのも魅力です。
渓谷を見下ろす絶好の高台に築かれた城で、古くから交易路の監視や防衛に使われてきました。堅固な石造りの城壁と塔が特徴で、周囲の山岳風景とのコントラストが美しい場所です。
山頂にそびえる石造りの要塞で、かつては国境防衛の最前線として重要な役割を担っていました。現在は中世博物館として一般公開され、武具や防具、歴史資料などが展示されています。
緑豊かな丘陵地帯に建つ優雅な城で、軍事拠点としてだけでなく貴族の居館としても使用されました。内部には歴史的な調度品が残り、庭園散策とあわせて中世の雰囲気を味わえます。
オーストリアの城は、軍事要塞としての迫力と、宮殿としての優雅さが同居しているのが魅力です。訪れるたびに、アルプスとハプスブルクの歴史が目の前に広がるような感覚になるのです。
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