
イングランドと聞くと、ロンドン塔やストーンヘンジみたいな観光地が頭に浮かびますが、実は全国各地に中世の城がびっしり残っているんです。しかもそれらは単なる観光名所じゃなく、ノルマン征服から内戦、王位争いまで、歴史の一大事件の舞台になった場所ばかり。石造りの壁や堀、塔の一つひとつに、権力者たちの野心や戦いの記憶が刻まれています。この記事では、そんなイングランド各地に現存する有名な城を地域ごとに紹介します。
|
|
|
|
ロンドンや南海岸沿いには、王権の象徴として国内に威信を示すだけでなく、海外からの脅威に備える要として築かれた城が数多く残っています。これらの城は、政治と軍事の舞台であると同時に、歴史の重要な事件や人物と深く結びついており、今もその存在感を放ち続けています。
ウィリアム1世(1028頃 - 1087)によって築かれた王宮兼要塞。中心のホワイト・タワーは11世紀のノルマン様式が色濃く残り、中世の威圧感を今に伝えています。長い歴史の中で王族の住居であった時期もあれば、国家の反逆者を収監し処刑する恐怖の場所としても機能しました。現在はクラウン・ジュエル(英国王室の宝飾品)の保管場所であり、観光客が絶えないロンドンの名所です。
ロンドン塔の空撮写真
出典:Rafa Esteve(著作権者) / Creative Commons CC BY‑SA 3.0より
世界で最も古く、現在も使用されている王室居城。歴代のイギリス国王や女王が増改築を重ね、中世の要塞構造と近代的な宮殿機能が融合しています。公務や式典の舞台でありながら、王族の私的な滞在先としても利用され、特に衛兵交代式は観光のハイライトの一つ。広大な庭園と精緻な内部装飾も必見です。
「イングランドの鍵」と呼ばれる、海峡防衛の最前線に立つ巨大な城塞。白亜の崖の上にそびえ、フランスからの侵攻を何世紀にもわたり防ぎました。中世の防御構造に加え、地下には第二次世界大戦で使われた指令所や秘密トンネルが広がり、軍事史の生きた博物館のような存在です。崖下の港と連動した防衛体制は、イングランドの安全を守る要となってきました。
内陸部には、封建領主が権力を誇示するために築き上げた堅牢な城が数多く残っています。これらの城は軍事拠点であると同時に、領主の政治の中心地、さらには贅を尽くした住居としても機能しました。中世の戦乱や政治交渉の舞台となっただけでなく、宴や儀式を通して貴族文化の華やかさも今に伝えています。
ノルマン征服直後の11世紀に築かれた城で、当初は純粋な要塞としての性格が強く、堅固な城壁と塔を備えていました。時代を経るにつれ豪華な貴族の邸宅へと改装され、庭園や大広間が加えられました。現在は観光施設として一般公開され、歴史再現イベントや甲冑展示、中世の弓術体験など、多彩なアクティビティで訪れる人々を楽しませています。
ノルマン様式の壮大な大城塞で、堅牢な二重の城壁と高い塔が街を見下ろします。最大の見どころは、現存する4部のうちの1部とされるマグナ・カルタの原本を所蔵していること。城壁の上をぐるりと歩けば、リンカーンの街並みや田園風景が一望でき、中世と現代が同居する景色が広がります。
元は中世の要塞でしたが、エリザベス1世の寵臣ロバート・ダドリーが16世紀に大規模な改修を行い、ルネサンス風の優雅な宮殿へと生まれ変わらせました。広大な庭園や豪華な居室、宴のための大広間など、王室をもてなすための工夫が随所に見られます。今では廃墟となった部分も多いですが、その壮大さと美しさは訪れる人を中世・ルネサンスの世界へと誘います。
スコットランドとの国境地帯や荒涼とした海岸沿いには、長年の戦争や侵攻に備えて築かれた屈強な城が今も数多く残っています。これらの城は単なる防御施設ではなく、権力の象徴や貴族の居館としての役割も担ってきました。北海の荒波や厳しい気候に耐えながら、時には交易や外交の拠点としても活躍し、その歴史の重みが石造りの壁からにじみ出ています。
中世以来の堅固な要塞でありながら、現在もノーサンバーランド公爵家の邸宅として使われ続けています。広大な中庭や重厚な門塔は歴史を感じさせつつ、内部は豪奢な居館として整えられており、今も貴族の生活が息づく場です。映画『ハリー・ポッター』シリーズではホグワーツ城のロケ地となり、世界中のファンが訪れる人気スポットとなりました。
北海を望む断崖の上に立つ壮麗な古城で、その起源はケルト時代にまでさかのぼるといわれます。中世には北海からの侵攻を防ぐ要塞として重要な役割を果たしました。城壁から見下ろす海と砂浜のコントラストは息をのむ美しさで、嵐の日には荒波が城下を白く泡立てる迫力ある光景も楽しめます。
ノルマン征服後の11世紀末に築かれた、宗教と軍事の機能を併せ持つ城。近くのダラム大聖堂とともに、ユネスコ世界遺産に登録されています。かつては司教領の中心として政治と信仰を統べる場でしたが、現在はダラム大学の施設として学生寮や学生活動の拠点に利用されており、歴史的建築の中で現代の学生生活が営まれるという珍しい光景が見られます。
イングランドの城は、その土地ごとの歴史や地理条件を色濃く反映していて、訪れると中世の空気を肌で感じられるんです。戦いの舞台だった場所が、今では静かに観光客を迎えている姿に、時代の流れをしみじみ感じるのです。
|
|
|
|