古代ギリシア衰退の原因になった疫病とは?

 

古代ギリシアにおいて、トイレや下水道といった衛生設備はあまり充実しておらず、排泄物はほぼ垂れ流し状態で、居住区はかなり不衛生だったと考えられています。そのことでチフス、ペスト、天然痘(てんねんとう)などあらゆる疫病の蔓延を許したことが、古代ギリシア衰退の遠因になったといわれています。

 

古代ギリシアを衰退させた「アテナイのペスト」

古代ギリシア史上最大の戦争といえば、アテナイスパルタの2大ポリスの対立に端を発する、ギリシャ世界全域を巻き込んだペロポネソス戦争が知られています。最終的にアテナイの敗北という結果に終わり、ギリシャ世界における覇権をスパルタに譲り渡すことになりました。

 

実はこの戦争、最初はアテナイが有利に戦局を進めていたのですが、その勢いを削ぐ大変な出来事が起こりました。アテナイ都市内に病原菌が大流行し、全人口の三分の一もが死亡する惨劇に見舞われたのです。

 

指導者のペリクレスまでもが死亡し、統率が乱れる中、スパルタがペルシアと同盟を組み軍備を増強すると、もはやアテナイ市民に戦争を続ける気力はありませんでした。これ以上の抗戦は無理とみて、全面的に降伏することとなったのです。

 

疫病の遠因

ペロポネソス戦争中に蔓延した感染症は、長らく「アテナイのペスト」と呼ばれていました。しかし記録に残る症状の分析から、現在この説は否定され、チフスや天然痘の流行が原因と考えられています。当時は蔓延時期が戦時中だった為、「スパルタ陣営が貯水池に毒を投げ込んだ」という噂も流れました。