セルビア音楽の特徴と歴史

セルビア音楽とは、セルビア人の歴史と文化の中で形成され、セルビアの伝統楽器や民謡などのセルビア固有の要素をとりいれた音楽のことです。ここでは、セルビア人の音楽の歴史とその特徴を、簡単にまとめてみたいと思います。

 

 

教会音楽と宮廷音楽

セルビアに限らずヨーロッパのほとんどの国で言えることですが、中世のセルビアでは、音楽は主に貴族と教会のものでした。音楽家にとって一番の成功は、皇帝や位の高い貴族のお抱えになることでした。また、セルビア正教会は、ビザンティン聖歌の伝統を現代まで継承しています。

 

叙事詩とグスレ

調べにのせて語られる叙事詩は、セルビアに限らずバルカン半島全域にみられる民俗音楽の特色の一つですが、セルビアでは特に、グスレという伝統楽器の演奏に合わせて詩が唄われます。

 

セルビアの叙事詩は、ドイツの詩人ゲーテが、セルビア語で叙事詩を読みたいがためにセルビア語を学び始めたほどのものでした。ゲーテの時代より400年以上も前、14世紀ごろに、セルビア王国はオスマン帝国に征服され、セルビア人とその伝統は圧政に苦しめられるようになりました。

 

帝国は統一化政策の一環として、セルビア独自の文化に関係したものをすべて禁止したのです。その中には当然、セルビア語の詩やグスレも含まれていました。それでも、祖国を愛する勇敢なセルビア人たちによって、セルビアの芸術文化は守られ続けました。

 

ある人たちは危険を承知で弾き語りを続け、またある人たちは、グスレの代わりに足で音を奏でるために「コロ」と呼ばれる伝統舞踊を編み出したのです。こういった歴史が、セルビア叙事詩の 物悲しくも美しく、切なくも力強い、独特の味わいを形成していったのでしょう。

 

有名なセルビア音楽

チャイコフスキー『スラヴ行進曲』

この曲には3つのセルビア民謡とロシア国歌が含まれます。

 

ドヴォルザーク『スラヴ舞曲 ハ長調 作品72』

コロを原型にした楽曲です。