
ヨーロッパの気候はじつに多様で、一年中カラッと晴れる南仏のような地中海性気候から、冬はがっつり雪に覆われる内陸の大陸性気候までさまざま。でも、その中でも「西岸海洋性気候」がとりわけ広く分布していて、ヨーロッパの自然や人の暮らしに大きな影響を与えてきました。では、なぜこの気候がヨーロッパでそんなに“支配的”なのか?その秘密を、3つの理由に分けて探っていきます。
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海洋性気候の原因である“北大西洋海流”の分布図
出典:Golfstrom Karte 2 / GNU Free Documentation License / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0より
ヨーロッパの西岸にこの気候が根づいている最大のカギは、なんといっても大西洋の存在です。海のぬくもりと空気の流れが、この地域の気候をじわじわと変えてきました。
ヨーロッパの西側に広がる大西洋からは、「北大西洋海流」という暖かい海流が流れ込んできています。これが真冬の気温を大きく引き上げてくれるんです。たとえば同じ緯度でも、カナダの東海岸に比べてイギリスやフランス西部のほうがはるかに暖かいのはこのおかげ。寒くなりすぎないから、冬でも人が暮らしやすく、農業にも適しているんですね。
さらに見逃せないのが、西から東に吹く偏西風の存在。この風が大西洋から湿った空気をヨーロッパへと運び込み、年間を通じて安定した降水をもたらしているんです。だからこそ、イギリスは「霧と雨の国」なんて言われたりするわけですし、豊かな草原や森林が維持されているのもこの湿気のおかげです。
西岸海洋性気候のもうひとつの特徴は、「北なのに意外と過酷じゃない」という点。本来なら寒さが厳しいはずの緯度でも、驚くほど穏やかな気候が成立しているのです。では、その裏にどんな地理的な秘密があるのでしょうか?
ヨーロッパの西岸って、わりと北のほうまで都市があるのに、そこまで寒くならないんですよね。これは、太陽の角度が低くても海流と風の相互作用が寒さを和らげているから。夏も極端に暑くならず、冬も厳しすぎない。「温暖で湿潤」っていう絶妙なバランスがここで保たれているんです。
ヨーロッパの西側は、急な山脈が少なくて、なだらかな平地が続くのも特徴。このおかげで、海からやってきた空気がスムーズに内陸まで入り込みやすく、西岸海洋性気候のエリアが広がりやすくなっているんです。もしこのへんに大きな山がそびえていたら、湿気がせき止められて、ここまで気候は広がっていなかったかもしれません。
最後に忘れてはならないのが、人間の営みとこの気候との深い関係です。ただの自然条件にとどまらず、歴史や経済、そして文化のなかにこの気候が溶け込んでいるんです。では、具体的にどんなふうに関わってきたのでしょうか?
年間を通して大きな寒暖差がなく、そこそこ雨も降る。この条件、じつは農業や牧畜にとって理想的なんです。だから昔からこの地域では小麦やジャガイモ、ブドウなんかの栽培が盛んで、酪農もさかん。イギリスやフランス、オランダが世界的な乳製品大国なのも、この気候が後押ししてきた結果なんですね。
そしてもうひとつ見逃せないのが、気候と貿易の関係。西岸海洋性気候の地域って、港を構えるのに適した地形が多くて、しかも海が穏やか。だから歴史的に海運が発達し、経済も栄えていきました。ロッテルダムやハンブルク、リヴァプールなんかはその象徴と言える存在です。
西岸海洋性気候がヨーロッパで広く分布しているのは、単なる偶然じゃありません。大西洋のぬくもり、風と地形のコンビネーション、そしてその気候を活かしてきた人々の営み。これらが長い年月をかけて織りなしてきた、ヨーロッパの風土そのものなんですね。
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