フランス美術の歴史と特徴とは?

西欧というのは、ルネサンスがそれを象徴するように、中世から現代にかけ、世界で最も芸術活動がさかんに行なわれている文化圏といえます。しかしその中でも質、量ともに突出しているのがフランスです。個性に富んだ美術様式が誕生し、革新的な芸術運動が勃興し、名だたる芸術家達を輩出してきました。ここではフランスの美術史を紹介していますが、古代ローマ時代フランク王国時代など、まだフランスという国家が成立する前から、この地で行なわれていた芸術活動も、「フランスらしさ」に影響を与えたといわれています。そのためここでは、古代にまでさかのぼってフランスの芸術活動の歩みを振り返ってみたいと思います。

 

 

フランス美術の歴史

先史時代

先史時代(オーリニャック文化)のフランスでは、ラスコー洞窟で動物(馬・羊・牛・鹿など)や人間の狩猟の様子などが描かれた原始美術が発見されています。2万年前の後期石器時代、クロマニョン人により描かれたものです。

 

古代ローマ時代

現在のフランスのあたるガリアには、前6世紀頃よりケルト人が居住していました。彼ら作る工芸品や宝飾品は高く評価されており、ケルト独特の紋様(渦巻き、組紐など)が浮き出た芸術様式、ケルト美術と呼ばれています。前1世紀にローマ人に征服され、ケルト美術とローマ美術が合わさった、ガロ・ロマン美術が成立しました。

 

フランク王国時代

ローマ帝国が崩壊するとフランク王国が成立し、メロビング朝美術(5世紀末〜8世紀)、カロリング朝美術(8世紀〜9世紀末)などの芸術様式が誕生。西ヨーロッパのキリスト教美術に重要な影響を与えました。カトリックを国教とする国として、教皇の援助により芸術にかける資金が潤沢にありました。

 

 

フランス時代

一般的にフランス美術といえば、ローマ帝国崩壊からしばらくたち、10世紀成立のフランス王国時代以降にその領土内で作られた作品を指します。18世紀にフランス革命で崩壊するまでの間に、様々な様式の美術が誕生しました。

 

ロマネスク美術

11世紀から12世紀にはロマネスク美術が、フランスを中心に西ヨーロッパ全体に広まります。ロマネスクとは「ローマ風の」という意味で、古代ローマ美術の影響が色濃く残っているのが特徴です。また木造建築から石造建築が主流になりました。

 

ゴシック美術

フランス美術としてのオリジナリティが現われだした12世紀半ば、パリを中心とするイルドフランス地方で、ゴシック美術が興ります。やがて西ヨーロッパ全域に普及していきました。有名なノートル・ダム大聖堂は初期ゴシックの代表格です。

 

フランボアイアン様式

後期ゴシックの13世紀後期になると、ステンドグラスやフランボアイアン様式が登場しました。フラボアイヤン(flamboyant)とは「炎のような」という意味で、トレーサリーのデザインが火炎を想起させる曲線を描いていることから。

 

バロック美術

17世紀にはルイ14世絶対王政を確立。同時期、曲線を多用した不規則で複雑なデザインをもつバロック美術が登場しました。ルイ14世による権力の一極集中を具現化したベルサイユ宮殿はバロック美術の代表格として知られます。

 

ロココ美術

ルイ14世の死後、ルイ15世の時代にロココ美術が花開きます。イタリアの影響のもと、フランスで発展し、全ヨーロッパに広まっていきました。語源はこの時代に多用されたロカイユ装飾から。

 

モダン・アート

18世紀末、フランス革命を経てナポレオンが台頭し、第一帝政の皇帝となると、彼は芸術をプロパガンダに利用できると考え、自らの権威を高めるプロパガンダ芸術を大量に作らせました。そうして国家に利用されることに反発する芸術家がたくさんいて、その結果19世紀から20世紀にかけてモダン・アート(近代美術)がフランスを中心に勃興したのです。

 

新古典主義

18〜19世紀に新古典主義が流行します。ギリシア・ローマの古典様式を規範とした、装飾のない幾何学的・抽象的な造形の作品が多数生み出されました。やたら複雑な造形のバロック、ロココへの反発から成立しました。

 

印象派

19世紀後半に、絵画の分野で印象派と呼ばれる様式が登場します。写実主義に対して光線の変化とそれにともなう効果を重視。事物から受ける印象を、そのまま忠実かつ大胆に表現しようとするのが特徴です。

 

 

現代

第二次世界大戦中、ナチスドイツに占領されたことで、芸術家たちは表現の自由を大幅に制限されました。多くの芸術家がアメリカに亡命。戦後もアメリカが西欧諸国の盟主としての地位を確立したため、相対的に地位を低下させましたが、量・質ともに世界の芸術の中心であることは変わりありません。

 

フランス美術の簡易年表

フランス美術は、ガリア美術(フランス人の祖先であるガリア人の美術)とローマ美術の混成である「ガロ・ロマン美術」を基礎として、フランク王国時代から民族・国家的性質が加わったことで、フランス色の強い独自の路線を歩むようになります。

 

12世紀
中世キリスト教文化の最盛期にあたり、肋骨穹窿(リブ・ボールト)のような新技術を導入した建築物が登場する。(例:サン・ドニ修道院聖堂)

 

13世紀
ゴシック建築のシャルトル大聖堂、ランス大聖堂、アミアン大聖堂が建設される。

 

16世紀
第一次フォンテンブロー派の台頭。

 

17世紀
第二次フォンテンブロー派の台頭。

 

19世紀
印象派、象徴派、ポスト印象派、ジャポニスムが隆盛する。

 

20世紀
第二次世界大戦終戦直後から「アンフォルメル」と呼ばれる色彩を重視し、激しい表現を行う運動が勃興する。