
「夏のヨーロッパは過ごしやすい」と耳にしたことはありませんか?たしかに、イギリスやフランス、ドイツあたりでは、真夏でも気温が30℃を超える日はそう多くないんです。カラッとしていて木陰に入れば涼しいし、夜は肌寒いことすらある。では、どうしてそんなに涼しいのか?じつはそこには、大西洋からやってくる風や海の流れ、そしてヨーロッパならではの地形が関係しているんです。今回は、そんな「ヨーロッパの夏がなぜ涼しいのか?」というテーマを、わかりやすく3つの視点からかみ砕いて解説していきます。
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ヨーロッパの夏が猛暑になりにくい一番の理由は、実は「海の冷たさ」にあるんです。
ヨーロッパの西に広がる北大西洋は、太平洋に比べて水温の上昇が遅く、夏でもあまり熱くなりません。つまり、海から立ち上る空気もそれほど熱くならない。だから、沿岸部に届く空気が冷やされることで、陸地の気温も上がりにくくなるんです。
日中、内陸が太陽で熱されると、海から陸へ向かって風(海風)が吹いてきます。この海風が海の冷たい空気を運び、ヨーロッパ西岸部に天然の「冷房効果」をもたらしているんですね。だからこそ、真夏でも“熱風”というより“そよ風”のほうがしっくりくるのです。
ヨーロッパの空を吹く「偏西風」も、夏の涼しさを支える名脇役なんです。
偏西風は西から東へ吹く強めの風で、海上の空気をヨーロッパ全土に送り込みます。夏でもこの風が活発に吹いているため、陸地の熱がこもりにくく、熱波が長続きしないんです。とくにイギリスやフランス北部では、まるで扇風機で空気をかき混ぜているような効果があるんですね。
南からやってくるアフリカの熱波(サハラ高気圧)も、偏西風によって押し返されることがあります。そのおかげで、中部・北部ヨーロッパには熱波が届きにくくなることもあるんです。これは完全なバリアというわけではないですが、大気の盾として一定の働きをしているわけです。
海と風にくわえて、ヨーロッパの「場所」と「形」も、涼しい夏を支える大事な要素です。
たとえばロンドンやパリは、実は北海道よりも緯度が高い場所にあります。高緯度では太陽が真上から照らすことが少なく、地面への日射エネルギーが弱いんです。だから同じ夏でも、直射日光の威力がちょっと控えめになるんですね。
ヨーロッパにはアルプスやピレネー山脈など、標高の高い地形が多く、また広い森林や草原も豊富。こうした地形は気温の上昇を抑える“緩衝材”として働き、都市のヒートアイランド化もそこまで深刻にはなっていません。
このように、ヨーロッパの夏が涼しいのは、冷たい海・吹き続ける風・そして緯度や地形といった自然の条件が、うまく組み合わさっているからなのです。まさに“地球の冷房装置”がしっかり働いているというわけですね。
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