
ポルトガル──その陽光あふれる丘陵地や、荒涼とした高地、そして大西洋に面した美しい海岸線には、意外にも野生動物の深い息づかいがあります。地中海的な気候の中で育まれた森や草原には、世界的にも貴重な動物たちが生きていて、人々の文化や歴史にも静かに影響を与えてきました。このページでは、そんなポルトガルに暮らす動物たちを、「自然」「文化」「代表動物」の3つの視点でわかりやすく紹介していきます。
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温暖で乾燥した気候と多様な地形が、独自の生物多様性を支えています。
ポルトガルの多くの地域では地中海性気候が支配的で、オリーブやコルク樫の森が広がっています。これらの森には、ウサギ、キツネ、ノロジカなどの哺乳類が暮らし、また多様な鳥類が飛び交う、命の交差点のような空間となっています。
とりわけテージョ川河口やサグレス岬といった沿岸部には、渡り鳥が集まる湿地帯が広がっています。フラミンゴやサギ、シギ類などが見られる場所でもあり、渡り鳥の中継地としてもヨーロッパ随一なんですよ。
ポルトガル北東部のセーラ・ダ・マラオ山地などの内陸部には、乾いた石灰岩質の高地が多く、オオカミや猛禽類などがひっそりと生息しています。まさに自然の奥座敷といった雰囲気が漂うエリアです。
動物たちは、ポルトガルの農業や信仰、芸術のなかに息づいてきました。
ポルトガルの田園地帯では、ヤギ、ヒツジ、牛などを用いた牧畜が今も盛ん。動物たちは食文化や衣料としてだけでなく、地域共同体の祭りや季節の営みにも欠かせない存在です。
カステロ・ブランコ犬やアレンテジャーノ犬などの在来犬種は、家畜の番犬や猟犬として長年人々の生活に寄り添ってきました。またルジターノ馬はポルトガル自慢の馬種で、古代ローマ時代から戦いや舞踏に使われてきた誇り高い血統です。
動物たちはしばしば民話の登場人物としても描かれます。とくにオオカミやネコは、知恵や精霊の象徴として扱われることも多く、自然と神秘が一体となった文化がそこには息づいているのです。
では、今のポルトガルを代表する野生動物たちを紹介していきましょう。
イベリアオオヤマネコ
世界でもっとも絶滅が危惧されていたネコ科動物のひとつ。スペインとポルトガルにしか生息していない固有種で、鋭い耳の房毛と特徴的なヒゲが印象的です。20世紀末にはほぼ絶滅寸前となったものの、近年の保護活動により徐々に数が回復してきています。
イベリアオオカミ
ポルトガル北部に今も生息するヨーロッパの中でも貴重なオオカミ。とても警戒心が強く、めったに人前には姿を現しません。農村部では家畜を襲う存在として嫌われる一方、森の支配者として尊敬される面もある、ちょっと複雑な存在です。
華麗なステップと高い知性で知られる、ポルトガル原産の古代馬種。もともとは戦いの馬でしたが、現在は馬術競技や伝統舞踏に活躍しています。ポルトガルの国民的動物と呼んでも過言ではありません。
ポルトガルの自然と文化に根づいた動物たち。それぞれが長い歴史と人との関係の中で、静かに、でもたしかに存在し続けているんですね。こうして見ると、動物はその土地の「もうひとつの言語」なのかもしれません。
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