
イギリス(正式にはグレートブリテン及び北アイルランド連合王国)は、ヨーロッパでも独特な行政構造を持つ国です。単一国家でありながら「連合王国」という形をとっていて、4つの「国(カントリー)」から成り立っています。そのうえで、地方自治や行政区分が多層的に組み合わさっているのが特徴です。ここでは、イギリスの地域区分と行政の仕組みをわかりやすく解説します。
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イギリスの最も大きな区分はイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドという4つの「カントリー」です。それぞれに独自の制度や文化があり、単なる地方区分以上の存在感を持っています。
これらの3地域には独自の議会や自治政府が置かれ、教育や医療、交通などを独自に運営しています。つまり「小さな国」としての性格を持っているんですね。
人口の大半を占めるイングランドには独自の議会がなく、ウェストミンスターのイギリス議会が直接統治しています。ここが「4つの国の中で異例の存在」といえます。
外交、防衛、通貨などはロンドンの中央政府が一括で担当しつつ、各地域に権限を分け与える「分権型の単一国家」というバランスを取っています。
イギリス全体の中でもイングランドは特に複雑な行政構造を持っています。州やカウンティ、都市圏といった多層構造が組み合わさっています。
イングランドは9つの地域(Regions)に区分されますが、これは主に統計や計画の単位で、強い自治権はありません。
実際の地方行政の中心はカウンティ(州/郡)とディストリクト(地区)です。カウンティが教育や警察など広域的なサービスを担当し、ディストリクトが住宅やごみ収集など住民サービスを担うという分業体制です。
ロンドンはグレーター・ロンドンという特別な行政区分で、32区とシティ・オブ・ロンドンに分かれています。さらにマンチェスターやリバプールなどでは「都市圏行政(メトロポリタンエリア)」が導入され、複数の自治体が協力して運営しています。
イギリスの住民に最も身近な行政単位は基礎自治体(Local Authority)です。ここが学校や社会福祉、図書館などを運営しています。
地域によっては一層制(単一自治体)の仕組みが採用され、カウンティとディストリクトをまとめて1つの自治体が担う場合もあります。地方ごとに制度が違うのがイギリスの特徴です。
現在のイギリスにはおよそ300前後の自治体があり、それぞれに議会と執行部が置かれています。地方税の徴収や住民サービスの実施を担い、地域の暮らしを直接支えています。
イギリスでは自治体と住民の距離が近く、地域行事や公共サービスに住民が関わる文化が根付いています。「小さな単位で生活に密着した自治を行う」のが伝統なんですね。
こうして見ると、イギリスの行政区画は「4つの国」「州・カウンティ・地区」「基礎自治体」という多層的な仕組みで成り立っています。中央集権的に見えて、実は地方分権の工夫があり、連合王国ならではの複雑さと柔軟さが共存しているんです。
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