大航海時代、世界中の様々な産品がヨーロッパ大陸にもたらされましたが、その産品の1つに「銀」があります。
銀は古来より貨幣・装飾品・工業製品の原料として重用された貴金属ですが、1545年スペイン人探検者によりボリビア南部のポトシ銀山が発見されて以降、ここで大量の銀が産出されては、ヨーロッパへと送られるようになりました。
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ヨーロッパに大量の銀がもたらされたことで、ヨーロッパの物価が数倍に跳ね上がる「価格革命」と呼ばれる経済秩序の革新が起こりました。この価格革命は中世封建社会の崩壊と、近代資本主義体制への移行を促進したという点で非常に重要です。
価格革命は、中世の固定した経済構造に大きな変化をもたらし、商業活動の活発化、貨幣経済の進展、都市の発展などを促しました。また、銀の流入により貨幣供給が増え、ヨーロッパ全体での物価上昇が見られ、これが価格革命と呼ばれる所以です。この現象は特にスペインやポルトガルで顕著であり、農産物や日用品の価格が急激に上昇しました。
鉱山における銀の発掘において、最初のうちは先住民を使役していましたが、やがて過酷極まる労働条件や感染症の流行により数が激減してしまいます。
そこでヨーロッパ人は、労働力の補完のためアフリカで黒人奴隷を調達するようになり、ヨーロッパ(毛織物・武器など)→アフリカ(黒人奴隷)→アメリカ(砂糖・綿花・タバコなど)という三角貿易が開始されることになるのです。
アメリカ大陸で採掘された銀は、アフリカからの奴隷労働によってもたらされ、アフリカで捕らえられた黒人奴隷はヨーロッパの工業製品と引き換えにアメリカへ送られました。これにより、ヨーロッパの経済は一層繁栄し、アフリカとアメリカは搾取と苦難の歴史を歩むこととなりました。
この三角貿易で最も利益をあげたのはイギリスであり、イギリスはのちに三角貿易で手にした莫大な富を元手に産業革命を起こし、大英帝国として世界の覇権を握るようになるのです。
イギリスはアメリカ大陸からの産品(砂糖、綿花、タバコなど)を本国に持ち帰り、そこで加工して再びアフリカやアメリカに輸出することで多大な利益を上げました。この富は産業革命を支える資本となり、鉄道の建設や工場の設立、蒸気機関の発明など、産業革命の進展に大いに貢献しました。
大航海時代における銀の流入は、ヨーロッパの経済と社会に大きな影響を与えました。価格革命による経済構造の変化、三角貿易による労働力と資源の移動、そしてこれらを背景としたイギリスの繁栄と産業革命の進展は、世界史における重要な転換点となりました。この時代の出来事は、現在のグローバルな経済システムの基盤を形成する一因となっています。
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