トゥキディデスとは何をした人?〜ペロポネソス戦争を詳細に記録〜

トゥキディデスのモザイク画

 

トゥキディデスの基本情報

 

生誕:前460年頃アテナイ
死没:前395年
民族:ギリシア人
主著:『歴史』

 

トゥキディデス(前460年頃 - 前395年)は古代ギリシアの歴史家で、古代ギリシア最大の戦争といえるペロポネソス戦争を詳細に記録した『歴史』の著者として知られる人物です。アテナイの有力貴族の出で、前431年にアテナイ同盟とスパルタ同盟による全ギリシアを巻き込んだペロポネソス戦争が勃発すると同時に、その戦況の記録を始めています。

 

自らもアテナイ側の将軍として戦線に立っており、その作戦の失敗でアテナイから追放処分を受けたことが、彼が公平の立場から歴史を記述するのに役立ちました。彼は亡命中、ギリシア各地をめぐり、戦争に参加もしくは間近で見た人々から情報を収拾、スパルタ・アテナイどちらからも距離を置いた立場で、史料を冷静・客観的・批判的に取り扱い歴史を書いたため、近代歴史学の先駆けとされているのです。

 

トゥキディデスの罠

トゥキディデスにちなむ言葉に「トゥキディデスの罠」という言葉があります。これは、もともとの覇権国家と下からのし上がる新興国家がライバル関係となり、「戦争が避けられない」という状態まで対立する現象のことです。この概念になぜトゥキディデスが関係しているのかというと、彼の代表作がペロポネソス戦争を記録した『戦史(ペロポネソス戦争の歴史)』であるからです。

 

ペロポネソス戦争とは

ペロポネソス戦争というのは、屈指の海運国家としてギリシアにおける影響力を増大させていくアテナイ(新興勢力)と、従来からの軍事大国であったスパルタ(既存勢力)との対立・・・という性質を持っています。そのためトゥキディデスによる

 

ペロポネソス戦争を不可避なものにしたのは、新興のアテナイに対する、スパルタの恐怖心である。

 

という評にちなみ、「トゥキディデスの罠」という概念が成立したのです。