
スコットランドの民族衣装・キルト
タータン柄の巻きスカート型衣装。スポランやジャケットと合わせて式典や祭で着用される
出典: Photo by Ian Robertson / Wikimedia Commons CC BY 2.0より
スコットランドの民族衣装は、ハイランド文化の象徴であり、特にキルトと呼ばれるタータン柄のスカートが世界的に知られています。タータンの柄や色は氏族(クラン)ごとに異なり、それぞれが自分たちの歴史や誇りを表しています。さらに、スコットランドでは小物や装飾品にも深い意味が込められ、地域ごとの文化や家族の伝統を反映しているのが特徴です。ここでは女性用・男性用、そして歴史の観点から、その魅力をじっくり見ていきます。
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女性の民族衣装は、男性のキルトのような厳格な規定はないものの、やはりタータン柄を用いることで家族や地域とのつながりを示します。華やかさと実用性を兼ね備え、結婚式や祭礼など特別な日には一層装飾的になります。
女性用のスカートは膝下から足首までの丈が一般的で、タータン柄のプリーツが美しく揺れるデザインです。素材はウールが多く、寒冷な気候でも暖かさを保てます。ブラウスは白や生成り色で、胸元や袖口にレースやフリルを施すことで上品さを演出します。日常着ではシンプルに、式典やお祝いでは色鮮やかで豪華な刺繍入りのものを選ぶことが多いです。
ショールは肩から斜めに掛けてブローチで固定するのが伝統的で、タータンや無地のウール生地が使われます。アクセサリーはケルト模様の銀細工や宝石付きブローチが人気で、装飾としてだけでなく、地域の伝統や家族の紋章を示す役割も果たします。こうした小物の選び方によって、同じ民族衣装でも印象が大きく変わります。
男性はキルトを中心とした装いが基本で、フォーマルな場面では規定に沿った着こなしが求められます。氏族ごとに異なるタータンは、自分のルーツを示す大切なアイデンティティの証です。
キルトは腰から膝上まで巻き付けるプリーツスカートで、下にはトレウザー(長靴下)を履きます。前面にはスパラン(毛皮や革製のポーチ)を下げ、財布や小物を収納します。スパランは装飾的な金具や毛皮で豪華に仕立てられることもあり、式典では特に目を引く存在です。
フォーマルな場ではプリンス・チャーリー・ジャケットを着用し、ボタンや装飾は銀色で統一されます。帽子はバルモラル帽やグレンガリー帽が選ばれ、氏族の紋章入りバッジや羽飾りを付けるのが伝統です。これらの小物は、着る人の社会的地位や家柄を示す重要な要素でもあります。
スコットランドの民族衣装は、ケルト文化とハイランド地方の生活様式から発展しました。防寒と機動性を両立させた機能性が、長い歴史を通じて受け継がれています。
タータン柄は自然染料で染めた糸を使った格子模様が起源で、元は地域や氏族を識別するための実用的なものでした。18世紀にはイギリス政府がハイランド文化の抑制政策を行いキルト着用を禁止しましたが、19世紀にヴィクトリア女王がスコットランド文化を称賛したことで復活し、民族の象徴となりました。
現代では結婚式や音楽祭、軍隊の儀礼などで民族衣装が着用されます。また観光業でも人気が高く、キルトやタータン製品はスコットランド土産として世界中で親しまれています。こうして、民族衣装は単なる伝統服ではなく、文化の発信源として生き続けています。
スコットランドの民族衣装は、キルトを核に氏族文化や誇りを表す装いとして、過去から現在まで鮮やかに受け継がれています。
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