
カンタブリア海岸
降雨と湿度が高い西岸海洋性気候の影響下で、緑豊かな牧草地と森林が広がる
出典:Author soyignatius / Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0より
ヨーロッパの夏って、じつはそんなに暑くない場所もけっこうあるんです。とくにイギリスやオランダ、フランス西部のような西岸海洋性気候の地域では、「夏なのに爽やか」なんて日が続くことも珍しくありません。猛暑でうだるような暑さが少なく、湿気もほどほど。そんな夏がどうして成り立っているのか?今回は、その“涼しさの秘密”を3つの視点からわかりやすくかみ砕いて解説します。
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まずはなんといっても大西洋の存在。この広大な海が、西岸の気候を“夏でも涼しく”保っている立役者なんです。
海は、陸地に比べて熱の変化をゆっくり吸収したり放出したりする性質があります。これを熱容量が大きいっていうんですけど、このおかげで気温の変動がゆるやかになるんですね。つまり、海に近い地域では真夏でも気温がガーンと上がりにくく、ちょっと肌寒いくらいの日が続いたりもします。
そして、大西洋から吹き込んでくるのが涼しい海風。昼間、陸地が熱せられると気圧差が生まれて、海から内陸に向かって風が流れ込むんです。これが天然のエアコンのような働きをして、街中の気温をグッと抑えてくれているんですね。
次に注目したいのは、大気の流れ。空を吹く風が、じつは西岸の夏を涼しく保つもうひとつの要因なんです。
ヨーロッパ上空には偏西風という西から東へ吹く強い風があります。この風が、夏でも冷たい空気を大西洋側から運んできてくれるんです。たとえばイギリスなんかでは、7月でも「上着がいるね」って日が意外と多かったりします。
西岸海洋性気候の夏は、晴れ渡る日ばかりじゃありません。むしろ曇りがちで、雨がパラつくこともしょっちゅう。これは大西洋の上で発生した低気圧が偏西風に乗ってやってくるからで、日射が抑えられるぶん、気温も上がりにくいという仕組みなんですね。
海と空の力だけじゃないんです。地形や位置──つまり「どこにあるか」っていうのも、西岸海洋性気候の夏が涼しい理由に深く関係しているんですよ。
イギリスや北フランス、オランダなんかの位置を地図で見てみると、けっこう北にあるのがわかります。緯度が高いと太陽の高さがあまり上がらず、夏でも日差しがジリジリと強くならない。これが涼しさの背景になっているんです。
西岸海洋性気候の地域って、なだらかな平野が多いから、海からの風がスーッと内陸まで届きます。でも、逆に言えば山に囲まれていないぶん、暑い空気が滞留しにくいってことでもあるんです。盆地みたいに熱がこもることが少ないので、猛暑になりにくいんですね。
西岸海洋性気候の夏が涼しいのは、海、風、空、そして地形や緯度が絶妙なバランスで絡み合ってるからなんです。地味だけど快適、そんなヨーロッパ西岸の夏は、自然がつくり出した小さな奇跡とも言えるかもしれませんね。
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