
氷河に削られた渓谷、緑に包まれた牧草地、そして雲を貫くようなアルプスの峰々──スイスの自然は、まるで絵本の中の世界のよう。でもそんな美しい風景の中に、本当に息づいている動物たちがいるのを忘れてはいけません。断崖を駆けるアイベックス、草原で草を食むヤギや牛、そして森の奥に潜むオオヤマネコたち。このページでは、スイスの動物たちを「自然」「文化」「代表動物」の3つの視点から、わかりやすくかみ砕いて紹介していきます。
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アルプスという壮大な舞台のもと、スイスの自然は多層的な生態系を生み出しています。
スイスは平地・丘陵・山岳と、標高差が極めて大きい国。そのため低地にはキツネやアナグマ、中高度にはノウサギやシカ、そして高山地帯ではアイベックスやシャモアなど、標高によって暮らす動物の種類がはっきり分かれているのが特徴です。
アルプスの高地には永久雪渓や断崖が連なり、そこに適応した高山性動物が暮らしています。たとえば雪うさぎやナキウサギ、さらには雷鳥の仲間など、極限環境に生きる生き物たちが、そこにはちゃんと存在しているんです。
ジュネーブ湖やチューリッヒ湖をはじめ、スイスには湖や渓流が多数あり、その水辺ではカワウソやサケ、カモなどの水生動物が多く見られます。自然保護の進んだ国ならではの、水と緑のバランスが保たれている環境なんですね。
スイスでは、動物は生活の一部であり、文化の中にもしっかりと根を下ろしています。
スイスの牧草地では、今もアルプスの夏の放牧文化(アルム文化)が健在。牛、ヤギ、ヒツジを連れて高地へ移動し、夏の間だけ山で過ごすこの習慣は、酪農と動物と人の共生を今に伝える貴重な伝統です。
スイス各地の山村に伝わる民話には、動物がしばしば登場します。とくにアイベックスや狼は、山の精霊や守護者として語られたり、困難を乗り越える知恵の象徴とされたり。自然と共に生きてきたからこそ、動物は「物語の語り手」でもあったんですね。
スイスでは野生動物の保護と観光がうまく結びついていて、高山地帯の動物観察やエコツアーが人気です。国家レベルでも国立公園や保護区の制度が整っていて、動物に負荷をかけない形での共存が実現されつつあります。
では、スイスの自然を象徴するような動物たちを見ていきましょう。
「アルプスの王」と呼ばれるアイベックス
長く湾曲した角と崖を登る驚異的な脚力で知られる、スイスを代表する高山動物。かつては絶滅寸前まで数を減らしましたが、国家的な保護プロジェクトによって回復。今ではアルプスの象徴として、観光ポスターや国章にもたびたび登場しています。
やや小柄な山岳ヤギの仲間で、岩場を俊敏に飛び回る姿が印象的。アイベックスよりも軽やかで、警戒心が強いため人目につきにくい存在ですが、高地トレッキング中に出会えたらラッキーです。
耳の房毛と短い尾が特徴的なこのネコ科動物は、スイスでは再導入が進められており、今では森の奥深くでひっそり暮らしています。人前に出ることはほとんどありませんが、静かな森の守り手とも呼ばれる存在です。
アルプスの放牧風景に欠かせない存在。濃い茶色の毛並みが特徴で、チーズやヨーグルトづくりにも欠かせない乳牛として知られています。アルム文化とともに、人と動物のつながりを今に伝える家畜です。
スイスの動物たちは、壮大な自然と人の暮らしのあいだに、静かに寄り添っているんですね。険しい山を駆ける姿、牧草地でのんびり過ごす様子──どれもこの国ならではの風景です。
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