
ロサンゼルス盆地の衛星写真
海と山に挟まれた地形が、地中海性気候特有の乾燥した夏と温暖な冬を生み出している
出典:Photo by NASA/JPL/NIMA / Wikimedia Commons Public domainより
ロサンゼルス──アメリカ西海岸に位置しながら、ヨーロッパの地中海沿岸と似たようなカラッとした夏と穏やかな冬をもつこの都市は、実は地中海性気候に分類されているんです。でも、「アメリカなのに地中海?」ってちょっと不思議に思いませんか?そこで今回は、なぜロサンゼルスが地中海性気候とされるのか、その気象的メカニズムをヨーロッパとの比較も交えて、わかりやすくかみ砕いて解説していきます。
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まずは基本的なところから。地中海性気候とは、どんな気候パターンのことを指すのかおさらいしておきましょう。
地中海性気候の代表的な特徴は、夏に雨がほとんど降らず、気温が高いということ。日中は30℃前後まで上がるものの、空気が乾いているため汗ばむほどの湿気は感じにくいのが特徴です。
そして冬は気温が穏やかで、雨がしとしと降るのがもう一つのポイント。つまり、季節によって乾湿のメリハリがはっきりしているわけです。ロサンゼルスもまさにこの条件を満たしているんですね。
アメリカ西海岸なのに、なぜこんな地中海的な気候になるのか?その理由は、大気の流れと海の性質にあります。
ロサンゼルスの夏には、太平洋高気圧──いわゆる亜熱帯高圧帯が上空に張り出してきます。これによって下降気流が発生し、雲ができにくく、雨が降らない状況が続くんです。これは地中海沿岸でも同じ現象が見られます。
ロサンゼルスの沖を流れるカリフォルニア海流は冷たい海流で、大気中の水蒸気を少なくしてしまいます。そのため、雲ができにくく乾燥しやすいという性質を持ち、夏の晴天を助長しています。このあたりも、地中海性気候の共通要素ですね。
では、世界のどんな場所がロサンゼルスと同じような気候をもっているのでしょうか?ヨーロッパとの対比をしてみましょう。
南フランスやイタリア中部、スペイン東部などとロサンゼルスは、気温の年較差や降水の季節パターンが非常に似ています。たとえばどちらもブドウやオリーブなどの乾燥に強い作物が育ちやすいという点で一致しています。
一方、アメリカの内陸部や太平洋北西部(シアトルなど)は全く異なる気候です。湿度が高かったり、気温が低かったりと、地中海性気候のような明快な乾湿パターンが見られないため、ロサンゼルスのような気候は実はかなり“例外的”ともいえるのです。
ロサンゼルスが地中海性気候なのは、単なる偶然じゃありません。高気圧の位置や海流の働き、そして地形との組み合わせによって、ヨーロッパの地中海沿岸とよく似た気候パターンが再現されているんですね。だからこそ、気候だけでなく、そこに根づく暮らしや文化も地中海的な要素が色濃くなるわけです。
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