大航海時代は中世?近世?

 

ヨーロッパの時代区分は、古代・中世・近世・近代・現代に大別されますが、大航海時代はこのうちの近世にあたります。「大航海時代の開幕」=「中世(middle ages)の終わりと近世(early modern)の始まりを示す画期」とするのがヨーロッパの歴史学的解釈のスタンダードになっているのです。

 

 

大航海時代で終焉する中世

中世というのは西暦476年西ローマ帝国の滅亡とともに始まりましたが、大航海時代の開幕にともなう、絶対王政諸国への莫大な富の流入は、ヨーロッパにおける勢力図を塗り替えました。

 

具体的には地中海貿易で繁栄を謳歌していたイタリアの都市国家が衰退し、大西洋貿易で有利な位置にあるポルトガルやスペインが台頭するようになります。

 

封建制から主権国家体制へ

そして大航海時代開幕後のヨーロッパ世界は、封建領主や教会といった伝統的権威がすっかり力を失い、絶対王政諸国が覇権を握る別世界となりました。そのため大航海時代の始まりが、中世の終わりを象徴する画期となっているのです。

 

大航海時代の始まりにともない、ヨーロッパで起こった変化については、【大航海時代がヨーロッパにもたらした影響】もご参照ください。また大航海時代と時期が重なる宗教改革も、ヨーロッパ世界を中世的枠組みからの解放するうえで大きな役割を果たしました。

 

大航海時代で開始される近世

中世の終わりと共に始まる、「近世」という時代は、18世紀後半のフランス革命や産業革命の直前あたりまで続きます。そして近代移行への画期とされるこれらの出来事も、大航海時代に世界中の物資や情報がヨーロッパに流入するようになったことが影響しているのです。

 

近世の特徴

近世は、封建制から中央集権的な絶対主義国家への移行が進んだ時代です。商業の発展とともに都市が成長し、科学や技術の進歩が加速しました。印刷技術の発明により、知識や情報の普及が進み、ルネサンスや宗教改革などの文化的・宗教的な動きが広がりました。

 

経済の変化

大航海時代を通じて、ヨーロッパは新しい貿易路と植民地を獲得し、商業革命が起こりました。これにより、ヨーロッパの経済は農業中心から商業・工業中心へと移行しました。新しい作物や資源の流入は、ヨーロッパの食生活や経済構造に大きな変化をもたらしました。

 

社会の変化

近世には、封建社会が崩壊し、中央集権的な国家が形成されました。都市の成長と商業の発展により、中産階級(ブルジョワジー)が台頭し、社会構造が変化しました。また、宗教改革により、カトリック教会の権威が揺らぎ、プロテスタント諸国が誕生しました。

 

文化の変化

ルネサンスの影響を受けて、芸術や科学が大きく発展しました。古典文化の再発見と人間中心の思想が広がり、文学、絵画、彫刻などの分野で多くの傑作が生まれました。また、科学革命により、天文学、物理学、医学などの分野で新しい発見が相次ぎました。

 

大航海時代は中世の終わりと近世の始まりを象徴する画期であり、ヨーロッパの社会、経済、文化に大きな変革をもたらしました。新しい航路と貿易の拡大により、ヨーロッパは世界との接触を深め、近世の発展と繁栄の基礎を築いたのです。この時代の変化は、後の近代世界の形成に大きな影響を与えました。