ヨーロッパの交通

交通とは、ある地点からある地点まで人間や乗り物などが運ばれることです。その為に整えられた通路・運搬具・動力の3要素を備えたシステムのことを交通機関といます。このカテゴリーではヨーロッパの交通史を紹介しています。

 

 

交通の歴史

人間は時代が下るごとに技術の進歩で交通速度を速め、時間と距離の問題を克服してきました。船・機関車・飛行機と次々と新しい乗り物を生み出し、陸上・海上・地下・空とみるみる交通網を拡大、文明の発展につなげてきたのです。グローバルな今の時代において、交通の重要性は国際競争の雌雄を決するほどにいっそう高くなっています

 

実際、古来より優れた交通技術を持つ民族は、政治的・軍事的に優位に立ってきました。13世紀より200年以上にわたり東ヨーロッパを支配・震撼させたモンゴル帝国は、モンゴル民族の騎馬交通技術の高さにより支えられていたといっても過言ではありません。

 

かつて地中海世界と北西ヨーロッパを支配下におさめ、現ヨーロッパの原型を作ったローマ帝国にしてもそうです。ローマは「すべての道はローマに通ずる」といわれるほど、帝国領の隅々にまで石畳の道路(ローマ街道)を張り巡らせていました。これにより軍隊を領土の隅々にまでいきわたらせ、政治的な統合を保っていたのです。

 

古代における交通

交易路の誕生

人間が政治共同体を形成し、共同体同士で物々交換を行うようになったことで「交易路」が生まれました。これが交通の始まりといえ、原始の交通手段は単純に人間そのものが歩くことでした。やがて距離や運搬量の限界を克服するために、家畜化した動物(牛、馬、ラクダなど)を利用する運搬手段が生み出されました。

 

車輪の誕生

紀元前3500年頃には東ヨーロッパ一帯で車輪が開発され、ユーラシア大陸にまで広がっていきました。また車輪を利用するには平坦な道が必要なので、「道路整備」というものも行われるようになりました。紀元前2800年頃にはメソポタミアで馬車も登場し、古代ローマでは馬車を戦闘用に特化させた戦車も用いられました。

 

中世における交通

シルクロード

中世になるとヨーロッパと中国を結んだ東西交通路「シルク・ロード(絹の道)」が成立し、ヨーロッパへは絹が、中国へは羊毛や金銀が送られるなど、両地域の商業を活性化させました。

 

大航海時代

15世紀大航海時代の幕開けとともに水上交通が活発化。ヨーロッパ列強の大西洋進出および「地理上の発見」とともに、世界中の市場がヨーロッパの市場と結びつけられ、地球の一体化を促進しました。

 

近代以降における交通

交通革命

18世紀に石炭をエネルギー源とする蒸気機関が登場。蒸気機関車と蒸気船が生み出され、交通革命とも呼ばれる社会変革が起こりました。これにより都市が大規模化すると、交通整備が国をあげて取り組むべき重要なものになりました。19世紀初頭には乗合馬車の運行が、19世紀末には路面電車地下鉄の運行が始まり、公共交通機関の基礎が成立しました。

 

乗り物の大衆化

19世紀末にはガソリン自動車が、20世紀初頭には飛行機が発明されました。さらに第一次世界大戦後は旅客機の運行が開始され、第二次大戦後は道路整備とともに自動車の大衆化が進みました。

 

環境問題の発生

交通の発達は文明を発展させた一方、交通網の拡大や自動車の大衆化とともに、温室効果ガスや有害物質の排出といった環境問題がやり玉にあがるようになります。それとともに、エコ自動車など「環境に優しい」を売りに出した乗り物が注目されるようになりました。