イタリアの農業の特徴

イタリアは農地に向いた平地が決して多いとはいえませんが、丘陵地や山岳地も農地として有効利用されており、農用地の割合は45%にも及びます。ヨーロッパでは農業生産額がフランスドイツに次ぐ第三位で、EU全体の13%と、データで見てもイタリアは農業が非常にさかんな国であることがわかります

 

 

 

イタリア南部の農業

イタリアで最も規模で大きい農業といえば、イタリア南部や諸島部で行なわれている地中海式農業でしょう。地中海式農業は、イタリアやギリシャ、スペインといった地中海性気候地域(※1)でさかんな農業形態で、夏季にはオリーブ、オレンジ、ブドウ、コルクガシといった乾燥に強い樹木作物が栽培され、冬季には平地で、牧畜や、小麦・大麦などの穀物栽培が行なわれます。特に地中海最大の島シチリア島では、地中海式農業でオリーブやオレンジの大規模栽培が行なわれており、同島での生産量はイタリア全体の大半を占めています。

 

※1…地中海性気候とは、温帯に属するケッペンの気候区分における気候区の1つです。夏季は高温・乾燥、冬季は温暖・湿潤という特色を持ちます

 

イタリア北部の農業

一方でアルプス山脈に近い北イタリアは、南部と異なり大陸性の温暖湿潤気候が支配的なので、多雨を活かした小麦栽培、酪農、畜産が中心に行なわれています。特にポー平原が広がるエミリア=ロマーニャ州は、別名「イタリアの食料庫」と称されるほど、農作物の生産がさかんな地域です。この地域では、ゴルゴンゾーラ、モッツァレラ、パルメザンなどを初めとする数十種類ものチーズが生産されているほか、卵と軟質小麦から作られるパスタでも有名です。

 

イタリア農業史

前10世紀頃
北イタリアのロンバルディア地方に、高度な古代ギリシア文明を持つエトルリア人によりチーズの製法が伝えられる。

 

前4世紀頃
イタリア半島に古代ギリシアから持ち込まれたオリーブの木が移植され、オリーブ栽培が始まる。

 

前3世紀頃
古代ギリシア人によりイタリア半島にブドウ栽培とワインの製法が伝えられる。

 

1世紀
チーズづくりの工程を記した農書「デ・レ・ルスティカ」が出版される。

 

9世紀頃
アラブ人によるシチリア島征服とともに柑橘類が持ち込まれる。

 

15世紀
ミラノ近郊のポー川流域でインディカ種の水田稲作が行なわれる。