
島国・イギリス──その緑豊かな田園風景や霧に包まれた森には、昔から多くの動物たちが静かに、そしてしたたかに暮らしています。古くは王侯貴族の狩猟の対象として、あるいは文学や詩のモチーフとして、動物たちはこの国の文化と深く関わってきました。そんなイギリスの自然と動物たちを、「環境」「文化」「代表動物」の三本柱でわかりやすくかみ砕いて紹介していきます。
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温帯に属するイギリスの自然はおだやかに見えますが、実は動物たちにとって絶妙なバランスのとれた環境なんです。
イギリスは大小さまざまな島々からなる国。そのため、外来種の侵入と固有種の適応が独特な形で進んできました。とくに哺乳類や爬虫類の種類は比較的少ないですが、そのぶん鳥類や昆虫が非常に豊富です。
イギリスの気候は年間を通して比較的湿潤で、極端な暑さ寒さがないため、常緑の牧草地や低木林が多く、草食動物や小動物にとって暮らしやすい環境。キツネやアナグマなどの中型哺乳類も安定して生息できるのが特徴です。
公園や庭園の多いロンドンなどの都市部にも、リスやハリネズミ、鳥類がふつうに暮らしています。まさに都市と野生の共存が、イギリスの大きな魅力となっているのです。
動物たちは、この国の文学、歴史、そして人々の生活のなかで、どんなふうに愛されてきたのでしょうか?
『くまのパディントン』『ピーターラビット』『くまのプーさん』など、イギリス発の動物キャラクターは世界中で愛されています。こうした作品の背景には、自然と動物を身近に感じてきた文化が根づいているからこそ、なんですね。
イギリスでは古くから野鳥の餌付けやハリネズミの越冬支援といった、家庭レベルでの動物との共生が当たり前のように行われてきました。ガーデニングの文化と結びついた小さな自然保護がこの国の大きな特色です。
動物福祉の意識も高く、RSPCA(動物虐待防止協会)は1824年に創設され、世界最古の動物保護団体といわれています。動物を“守るべき存在”と考える姿勢が、社会全体にしっかりと根づいているのです。
それでは、イギリスの自然と文化を象徴するような代表的な動物たちを見ていきましょう。
ロンドンの公園のトウブハイイロリス(bigfootによるPixabayからの画像)
元々は北アメリカ原産ですが、イギリスでは今やすっかり定着。都市の公園や庭に姿を現し、手渡しでナッツを受け取るほど人懐っこい個体も。反面、在来種のニホンリスを脅かす存在としても注目されています。
アカギツネ
イギリスの原風景といえば、この赤茶色のキツネ。田園地帯からロンドン市街地にまで現れ、ゴミ箱をあさる姿も珍しくありません。イギリス人にとっては、ちょっとした“身近な野生”を感じさせる存在なんですね。
ヨーロッパアナグマ
がっしりとした体と特徴的な顔の模様が印象的な中型哺乳類。夜行性でめったに姿を見せませんが、農村部の林縁部ではよく見られます。イギリスの民話や占いでも、アナグマは神秘的な動物とされています。
コマドリ
クリスマスカードの定番デザインとしても有名なこの鳥。胸の赤い羽が特徴で、春の訪れを告げる鳥として古くから親しまれています。イギリスでは国鳥にも指定されており、「小さな友だち」と呼ばれることもあるんですよ。
ナミハリネズミ
夜の庭先でがさごそ音を立てるこの小さなハリネズミは、イギリスの家庭にとってとても身近な存在。虫を食べてくれる“庭の守り人”として重宝され、ハリネズミ用の通路をフェンスに設ける家庭も増えてきています。
イギリスに暮らす動物たちは、単なる自然の一部ではなく、文化や人々の生活としっかり結びついている存在なんですね。だからこそ、彼らの姿を追うことで、この国の「本当の風景」が見えてくるのかもしれません。
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