古代ローマ公衆浴場、衛生面はどうだったのか

 

昨今の古代ローマを舞台にした浴場漫画の流行で、「古代ローマ人」と聞けば、「お風呂好き」につなげる人は多いと思います。実際ローマ帝政期になると、各地に公共施設として公衆浴場が建設されるようになり、老若男女、貧富の差を問わず利用されていました。

 

 

公衆浴場は不衛生だった?

古代ローマ人の風呂好きは、風呂に入る習慣がなかった中世ヨーロッパの人々と対照的に語られることが多いですが、公衆浴場そのものはとても不衛生だったと考えられています。というのもローマ人は湯につかる前に体を洗ったり、湯舟のお湯をこまめに変えたりはしなかったようなのです。

 

つまり確かに浴場はローマ人の体を綺麗にし、体臭を解消したかもしれませんが、排泄物や汚物により細菌が溢れ、他の人から病気をもらったり、感染病を蔓延させる原因にもなっていたと考えられています。

 

古代ローマは、高度な水道や下水設備など衛星サービスを備えるなど、他の古代都市と比べて公衆衛生の意識は高かったといえますが、やはり時代が時代ですから、行き届かない部分も多々あったのですね。

 

公衆浴場の構造と利用方法

公衆浴場は多くの部屋やプールで構成されていました。主な施設としては以下のようなものがありました:

 

  • アプラリウム(Apodyterium): 衣服を脱ぐ更衣室。
  • フリギダリウム(Frigidarium): 冷水浴用のプール。
  • テピダリウム(Tepidarium): 温水浴用の部屋で、体を温めるための場所。
  • カリダリウム(Caldarium): 熱水浴用のプールがあり、蒸気浴も楽しめる。
  • ラコニクム(Laconicum): サウナのような乾熱浴場。

 

ローマ人はこれらの施設を順番に巡ることでリラックスし、健康を保つと信じていました。

 

衛生面の問題

公衆浴場の衛生面には多くの問題がありました。

 

水の管理

浴槽の水は頻繁に交換されることはなく、多くの人が同じ水を利用しました。これにより、汚れや病原菌が拡散するリスクが高まりました。

 

身体の洗浄

現代のようにシャワーで体を洗い流してから浴槽に入る習慣はありませんでした。そのため、汚れた体でそのまま浴槽に入ることが一般的でした。

 

排泄物の問題

公衆浴場にはトイレが併設されていることが多く、排泄物が適切に処理されなかったため、細菌や病原菌の温床となることがありました。

 

病気のリスク

これらの衛生問題により、公衆浴場は病気の温床となることがありました。例えば、皮膚病や消化器系の感染症などが広がりやすかったと考えられています。古代ローマの医師ガレノスも、公衆浴場での感染リスクについて警告していました。

 

古代ローマの公衆衛生意識

とはいえ、古代ローマは他の古代都市に比べて公衆衛生の意識が高かったことも事実です。以下のような取り組みが行われていました。

 

水道システム

ローマには高度な水道システムが整備されており、新鮮な水を都市内に供給していました。アクアダクト(水道橋)を通じて遠方から水を引き、公共施設や家庭に供給していました。

 

下水道システム

古代ローマの下水道システム(クロアカ・マキシマ)は、都市の汚水を効率的に排出し、衛生環境を保つ役割を果たしました。

 

公共トイレ

公共トイレ(ラトリナ)も設置されており、これにより街中の衛生環境が改善されました。

 

まとめ

古代ローマの公衆浴場は、当時の人々にとって重要な社交の場であり、リラックスや健康維持のために利用されました。しかし、衛生面では多くの問題を抱えており、病気の温床となることもありました。それでも、古代ローマの公衆衛生意識は他の古代文明に比べて高く、公共の水道や下水設備の整備はその証拠と言えるでしょう。現代の視点から見ると不十分な点も多々ありますが、当時としては非常に進んだ取り組みがなされていたことは評価されるべきです。