
フランスといえば「中央集権国家」というイメージが強いですが、実際の行政区画はかなり多層的で、国土の大きさをカバーするために巧みに組み立てられています。革命以来の歴史を背負いながらも、現代的な地方分権の工夫も盛り込まれていて、知れば知るほど面白い仕組みなんです。ここでは、フランスの地域区分と行政の構造をわかりやすく解説します。
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フランスの大きな行政区分のひとつが地域圏(Région)です。これはEUの政策単位としても使われており、広域的な行政に欠かせません。
本土フランスは13の地域圏に分けられ、さらにコルシカ島や海外地域圏(グアドループ、マルティニーク、ギアナ、レユニオン、マヨット)も含まれています。これらはEU内の「NUTS-2」レベルでも重要な単位です。
地域圏は経済開発、交通インフラ、教育(高校レベル)などを主に担当します。広い国土のなかでバランスよく開発を進めるための枠組みなんですね。
中央集権的な性格を持ちながらも、1980年代以降の「地方分権改革」によって地域圏の権限は強化されました。「パリ一極集中から地方分権へ」という流れの象徴でもあります。
地域圏の下に置かれているのが県(Département)です。これはフランス革命期に作られた制度で、全国を均一に管理する目的で設計されました。
フランスには本土96県と海外5県を合わせて101県があります。それぞれに県庁所在地が置かれ、日常的な行政を支えています。
県は福祉、教育(中学校)、道路整備といった分野を担当します。つまり住民生活に直結する部分をきめ細かく支えているわけです。
県制度は「均一な行政」を目指したフランス革命の産物でした。パリから遠い地方も同じ基準で統治するために、人口や面積のバランスを考えて区切られたんです。
一番身近な行政単位は基礎自治体(Commune)です。日本でいう市町村にあたります。
フランスにはなんと約3万5千の基礎自治体が存在します。これはヨーロッパでも圧倒的に多く、村単位の細かい区分が残っているからなんです。
自治体は初等教育、上下水道、ごみ処理、都市計画などを担当します。住民にとって「役所」といえばまずここを思い浮かべる存在です。
パリやリヨンのような大都市圏では、複数の自治体が共同体(Communauté urbaineやMétropole)を形成し、交通や都市計画を広域で進めています。都市化に対応した新しい仕組みなんですね。
こうして見ると、フランスの行政区画は「地域圏」「県」「基礎自治体」という三層構造で、中央集権と地方分権のバランスを取りながら動いていることがわかります。革命の理想から始まった制度が、時代に合わせて進化し続けているのはフランスらしい特徴ですね。
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