
ケッペンの気候区分
アフリカ中部にみられる薄ピンク色の地域がサバナ気候であり、ヨーロッパには存在しない気候帯
出典:Photo by LordToran / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0より
ステップ気候とサバナ気候──どちらも「草原」が広がる環境ですが、じつはまったく異なる性質をもっています。ヨーロッパ東部に見られるステップ気候と、アフリカや南アジアのサバナ気候。このふたつの気候帯は、それぞれに独特の風土や文化、そして人々の暮らしを育んできました。今回は、ステップとサバナの違いをただ比べるだけではなく、とくにヨーロッパにおけるステップ気候の文化的意義を踏まえながら、そのコントラストを深掘りしていきます。
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まずは、気候そのものの特徴──とくに雨の降り方──がどれほど違うのかを見てみましょう。
ステップ気候では、年間降水量が少なく、しかも雨が降る時期がとても不安定。ヨーロッパ東部の草原地帯(たとえばウクライナ東部やカザフ草原)では、農業に適さない乾燥地が多く、自然と遊牧という生活スタイルが発達していきました。
サバナ気候では、雨季と乾季がくっきり分かれています。アフリカやインドなどに広がり、雨季には激しいスコールが降るのが特徴。このため、農業が成り立ちやすく、定住型の農耕社会が古くから発展してきました。
続いては、地表を覆う植物──つまり「草原」とひとことで言っても、その見た目や構成はかなり違います。
ヨーロッパのステップでは、丈の低い多年草が中心。木がほとんど生えない乾いた景観が広がっています。これは、放牧にとても適した環境であり、ウマやヒツジなどとともに移動する遊牧民の生活を支えてきました。
サバナでは草原のなかにぽつぽつと木が生える独特の景観が特徴です。バオバブやアカシアのような乾季に強い木が点在し、視覚的にも「アフリカらしい」風景をつくり出しています。
最後に、気候が人びとの暮らしや社会のあり方にどう影響したのか──特にヨーロッパと比較する視点から考えてみましょう。
ヨーロッパ東部や中央アジアのステップでは、ウマを中心とした移動型の暮らしが主流となり、フン族やモンゴル帝国といった遊牧系の勢力がヨーロッパにも強い影響を与えました。これは定住農耕中心の西ヨーロッパとは対照的で、異なる文化圏の接触を生み出すきっかけにもなったのです。
一方、サバナ気候の地域では、定住してトウモロコシやヤムイモなどを栽培する農耕文化が根づいていきました。雨季に合わせて耕作を行う生活リズムが、村落や国家の形成にもつながっていったのです。
このように、ステップ気候とサバナ気候は似て非なるもの。ヨーロッパにおけるステップ気候は、遊牧や騎馬文化という独特の歴史を育み、世界史にも多大な影響を与えてきました。気候と文化の結びつき、その奥深さを感じずにはいられませんね。
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