古代ギリシャ時代

古代ギリシャ時代

古代ギリシャの自由と民主主義という価値、その文化的起源と尊厳がなかったら、ヨーロッパは存在しないだろう。

 

ドイツ社会学者 ウルリッヒ・ベック(1944-2015年)

 

古代ギリシャは、ギリシャ共和国周辺地域(ペロポネソス半島を中心としたバルカン半島やエーゲ海の島々)で栄えた、信仰(ギリシア神話)や言語(古代ギリシャ語)を共有する文化圏のことです。ポリス(都市国家)と呼ばれる都市サイズの国家群がその担い手となり、最盛期を迎えた前5〜前4世紀には「民主主義」を始め、現在に続く様々なヨーロッパの文化・価値観の基礎が築かれました。

 

 

古代ギリシャ文明の繁栄

前2000年頃、ペロポネソス半島のミケーネを中心に、ミケーネ文明(ミュケナイ文明)と呼ばれる青銅器文明が繁栄しました。ミケーネは「線文字B」「アガメムノンの仮面」が象徴するように、非常に先進的な技術を持っていましたが、「前1200年のカタストロフ」を受け崩壊してしまいます。

 

ポリス社会の成立

カタストロフの後、ギリシアは著しく文明が後退する暗黒時代を経験しますが、その間に鉄器がもたらされ復興の原動力となります。前8世紀半ばには、ポリス(都市国家)が各地に成立し、「自由」と「自治」の精神のもと政治的・文化的に発展していきました。

 

ポリス社会が栄えて人口が増えてくると、ギリシア人は黒海沿岸・小アジア・南イタリア・イベリア半島など方々に植民を行うようになり、イスタンブール,ナポリ,マルセイユなど現在に続く都市の原型を築きました。

 

アテナイの繁栄

前5世紀前半、アナトリアから侵攻してきたアケメネス朝ペルシアを、ギリシアポリスで連合を組み撃退しました。このペルシア戦争で最も活躍したアテナイは、デロス同盟(前478年)を介して他のポリスを支配するようになり、「アテナイ帝国」とも呼べるギリシア覇権を確立。他のポリスからかき集めた税により大いなる繁栄を享受します。

 

以後アテナイがギリシアにおける文化の中心として、歴史的にも重要な位置を占めるようになり、その覇権はペロポネソス戦争(前431年〜前404年)でスパルタに敗れるまで続きました。

 

アテナイで数学・天文学・科学・物理学・地球科学など広く様々な自然科学の基礎が生まれたのは、人々が繁栄で生まれた余暇で、自然の成り立ちについて自由に思考できるようになったことが背景にあります。

 

古代ギリシャの衰退

ギリシア特有の自由で合理的な精神文化は、自由と自治を理念とするポリス社会だからこそ発展してきました。しかし独立心が強いからこそ、繰り返されるポリス同士の覇権争いで、前4世紀頃からギリシア社会全体が衰退に向かっていきます。

 

そんな中、北方から勢力を伸ばしてきたのがマケドニアという中央集権的な広域国家で、内乱で疲弊したギリシアポリスは、前4世紀末にはこの大国の支配下に置かれてしまいます。これにより、従来の伝統的な「自由」を理念とするポリス社会は終わってしまいました。

 

ヘレニズム文化の繁栄

一方で、マケドニアによる東地中海世界征服により、ヘレニズム文化という新しい文化が栄え、ギリシア文化がオリエント世界でも通用する超民族的普遍的性格を持つようになるヘレニズム時代が到来します。マケドニアは前2世紀後半ローマに吸収されてしまいますが、ヘレニズム時代はローマがエジプトを征服する前30年まで300年も続きました。

 

またギリシア世界を征服したローマですが、ギリシアの古典や神話、文学などは「文化的にはギリシアがローマを征服した」といわれるほどローマに多大な影響を与えました。ローマは前1世紀後半に地中海世界を統一し、現在に続くヨーロッパ世界の原型を創りますが、あくまで「ヨーロッパの起源はギリシア」といわれるのは、ローマ文化の基礎にあったは、ギリシア文化であったからなのです。

 

古代ギリシャの復興

宗教や権威に頼らず主体的に思考する古代ギリシャの精神文化は、14世紀以降のルネサンス時代に再評価され始めます。ルネサンスにより超自然・宗教的な思考が支配的であった「中世」から、現実的・科学的思考を重視する「近代」への脱皮が始まり、ルネサンスを背景とした科学的発見や技術的蓄積が、のちにヨーロッパが世界をリードしていく上で重要な原動力となるのです。