ヨーロッパで地中海性気候の国はどこ?

地中海性気候域の分布図
ヨーロッパ南部沿岸を中心とした黄緑色の領域が地中海性気候域

出典:Photo by LordToran / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0より

 

ヨーロッパの中でも、太陽の光がまぶしく降り注ぐ南部──そこには地中海性気候という、夏の乾燥と冬の温暖さが絶妙に組み合わさった気候帯が広がっています。この気候は、単に「過ごしやすい」だけでなく、農業・建築・文化・暮らし方にまで影響を与え、地域ごとの特色を形づくってきました。では、そんな地中海性気候に属するヨーロッパの国々とは、具体的にどこなのでしょうか?それぞれの国の風土の個性もあわせて見ていきましょう。

 

 

地中海性気候の基本条件

まずは、地中海性気候がどんな気候なのかをざっくりおさらいしながら、それがどんな地域に分布しやすいのかを考えてみましょう。

 

夏に乾いて冬にしっとり

地中海性気候は、夏は高温・乾燥、冬は温暖でやや湿潤というのが基本的な特徴。つまり、夏はほとんど雨が降らず、空気がカラカラに乾き、冬になるとしっとり雨が降るという、はっきりした季節性があるんですね。

 

中緯度の西岸部が多い

この気候は、中緯度(だいたい北緯30〜45度)で、海に面した地域によく見られます。地中海沿岸のヨーロッパ南部は、まさにその条件にぴったり。偏西風の影響で冬に雨がもたらされ、夏はアゾレス高気圧に覆われることで乾燥する──そういう気象のメカニズムが働いているわけです。

 

地中海性気候が支配的な国々

では、この気候帯に実際に属しているヨーロッパの国を、代表的なエリアとともに見ていきましょう。

 

イタリア

イタリア半島の中南部やシチリア島が代表的で、夏はカラッとした暑さが続きます。トマトやオリーブ、ブドウといった作物がよく育ち、古代ローマ以来の農耕文化とも相性バッチリ。建築も白っぽい壁と石の床で、夏の暑さをうまく避ける工夫がなされています。

 

スペイン

とくにアンダルシア地方や地中海沿岸部が地中海性気候に該当します。夏の乾燥に備えた白壁の家、パティオ(中庭)、日陰の道などが風景の特徴。オリーブの一大生産地としても知られ、暑さの中での暮らしの知恵が色濃く残っています。

 

フランス(南部)

プロヴァンス地方やコート・ダジュールなど、フランス南部の地中海沿岸部もこの気候に属します。ラベンダー畑やワイン用ブドウの栽培がさかんで、晴れの日が多く、観光地としても人気です。マルセイユやニースといった都市はその代表例。

 

一部地域が地中海性気候の国々

全土ではないけれど、一部に地中海性気候のエリアを含む国も存在します。それぞれに独特の気候と文化が息づいているんです。

 

ギリシャ

エーゲ海沿岸や島々などが典型的な地中海性気候で、夏は乾燥して暑く、冬は温暖。オリーブやブドウの生産に加えて、古代ギリシャ時代からの石造建築文化も、暑さをやわらげる知恵の塊です。

 

クロアチア

アドリア海沿岸部(ダルマチア地方など)は地中海性気候にあたり、赤屋根と石の街並みが特徴的。夏は観光シーズンとしてにぎわい、乾いた空気と透明な海が人々を惹きつけます。

 

アルバニア・モンテネグロ・スロベニア

バルカン半島の西側──とくにアドリア海に面した沿岸地域は、いずれも部分的に地中海性気候に属しています。農業や漁業とともに、地中海文化の香りを残した生活スタイルが見られるんです。

 

このように、ヨーロッパで地中海性気候に属する国は、単に「気温が暖かい」だけじゃなく、それぞれの地理や歴史と深く結びついた独自の風土を築いてきたんです。乾いた夏としっとりした冬──このバランスが、人と自然の営みをずっと支えてきたというわけなんですね。