功利主義と利己主義は、しばしば混同されることがありますが、実は根本的に異なる哲学的概念です。功利主義は最大多数の最大幸福を目指す思想であり、利己主義は個人の利益や幸福を最優先する考え方です。これらの違いを理解することは、倫理学や社会学、さらには政治学においても重要な意味を持ちます。以下で功利主義と利己主義の違いについて解説します。

 

 

功利主義とは何か

功利主義は、18世紀後半にジェレミー・ベンサムによって提唱された哲学的思想です。この理論の核心は、「最大多数の最大幸福」を目指すことにあります。つまり、ある行動や政策がどれだけ多くの人々に幸福や利益をもたらすかが、その行動の倫理的価値を決定する基準となります。功利主義者は、社会全体の幸福を最大化することを目標とし、個々の行動や選択がその目標にどのように貢献するかを考えます。この思想は、社会政策や法律の制定においても大きな影響を与えてきました。

 

利己主義とは何か

一方、利己主義は個人の利益や幸福を最優先する考え方です。利己主義者は、自分自身の幸福や利益を追求することが最も重要であり、他人の幸福や利益は二次的なものと考えます。この考え方は、個人の自由や自己決定の重要性を強調する点で、リバタリアニズムや自由主義と関連が深いです。利己主義は、個人の権利や自由を尊重し、他者への干渉を最小限に抑えることを重視します。

 

功利主義と利己主義の違い

功利主義と利己主義の最も大きな違いは、考慮する対象の範囲にあります。功利主義は社会全体の幸福を重視し、個々の行動が集団全体に与える影響を考慮します。対照的に、利己主義は個人の幸福や利益を最優先し、他人の幸福は自分の利益に直接関連しない限り、重要視しません。この違いは、倫理的判断や政策決定において、異なるアプローチを取ることを意味します。功利主義は公共の利益や社会正義を重視するのに対し、利己主義は個人の自由や自己決定を尊重します。