古代ローマで行われていた避妊方法とは?

 

古代ローマでは「シルフィウム」と呼ばれるセリ科ウイキョウ属の植物が避妊薬として摂取されていました。銀と同等かそれ以上に高価なものとして扱われ、獲りすぎにより現在は絶滅しています。

 

 

シルフィウムの使用と効果

シルフィウムは、古代ローマで最も人気のある避妊薬でした。植物の樹液や種子が避妊効果を持つと信じられ、飲み物に混ぜたり、直接摂取したりして使用されました。この植物はリビアのキュレネ地方で栽培され、ローマ帝国全土に広がりました。その希少性と効果の高さから、シルフィウムは非常に高価であり、富裕層の間で特に人気がありました。

 

コンドームの使用

古代ローマでは、動物の膀胱や腸をコンドームとして利用していました。ただ古代ローマ時代におけるコンドームは避妊というより性感染症の防止が目的でした。(動物の腸や皮を避妊具として利用する文化は非常に古く、紀元前3000年のエジプトに起源を持ちます。古代どころか、19世紀にゴムが普及するまでこれが普通でした。)

 

膣用坐薬とその改良

また石や青銅を利用した膣用坐薬を使っていたこともわかっています。ただしこれをそのまま利用することは性交中の女性に痛みを与えるので、ギリシアの意志ディオスコリデス(40年頃〜90年)は著書『薬物論』の中で膣用坐薬をペパーミント・オイルに浸すことを推奨しています。これにより、坐薬の挿入が容易になり、痛みを軽減することができました。

 

その他の自然療法

ディオスコリデスの『薬物論』には、他にも多くの自然療法が記載されています。例えば、ザクロの皮を煎じて飲むことや、酢やオリーブオイルを膣内に注入する方法が避妊手段として用いられていました。これらの方法は、子宮内に精子が到達するのを防ぐ効果があると信じられていました。

 

文化的背景と避妊の必要性

古代ローマでは、避妊は社会的および経済的な理由から重要視されていました。ローマ市民は大家族を持つことが理想とされていましたが、貧困層や奴隷にとっては、子供の数を制限することが生活を安定させるために必要でした。また、都市部では人口過密や公衆衛生の問題もあり、避妊はこれらの問題に対処するための手段ともなっていました。

 

宗教と避妊

古代ローマの宗教観では、避妊に対する明確な禁止はありませんでした。しかし、一部の宗教儀式や信仰においては、子孫を残すことが重要視される場合もありました。このため、避妊の使用には個人や家庭ごとの判断が大きく影響しました。

 

古代ローマで行われていた避妊方法は、シルフィウムのような植物由来の避妊薬や、動物の膀胱や腸を利用したコンドーム、石や青銅の膣用坐薬など、多岐にわたりました。これらの方法は、当時の知識や技術を駆使して工夫されたものであり、避妊の必要性に応じて利用されました。現代の避妊技術と比べると原始的ではありますが、古代ローマ人の生活や文化を理解する上で重要な一面を示しています。