ギリシャ共和国の公用語はギリシャ語です。人類史上最も影響力を持った言語の1つともいえ、民主主義(democracy)、劇場(theater)、哲学(philosophy)などなど、聞き馴染みのあるヨーロッパ言語の多くが、ギリシャ語に由来しているのはその証拠といえます。
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ギリシャ語は紀元前3千年頃にはすでに話されていたと考えられており、3000年以上の歴史を持つ言語はインド・ヨーロッパ語族では最古です。本格的に影響力を持ち始めたのは、前4世紀のマケドニア王アレクサンドロスの遠征以降で、この遠征をきっかけにギリシャ文化が東地中海地域広くに浸透し、やがてはこの地域の共通言語にもなりました。
エジプトには古くからヒエログリフやデモティックなど独自の文字が存在していましたが、ギリシア文字が台頭したことで、これらの文字は消滅し、公文書表記にすらギリシャ文字を使われるようになりました。
ギリシャ世界の盟主たるマケドニアが、ラテン語を公用語とするローマに滅ぼされた後でも、ローマは先進ギリシャ文化の保全に積極的だったため、ギリシャ語が廃されることはありませんでした。またローマの東西分裂後成立した東ローマ帝国(ビザンツ帝国)にいたっては、時代が下るごとにギリシャ化が加速し、公用語もラテン語ではなくギリシャ語を採用するようになりました。
現在ギリシャ語の表記に使われているのは、前9世紀頃、フェニキア文字を発展させることで成立したギリシャ文字です。この文字により数々の著名な文学作品が誕生し、現在残る古代ギリシア文献のほとんどはギリシャ文字によるものです。ホメロス叙事詩『イリアス』『オデュッセイア』は、ギリシャ文字による初の文学作品として知られます。
ギリシャ文字の成立前は、ミケーネ文明の線文字Bでギリシャ語が表記されていました。しかし前12世紀のミケーネ文明の滅亡と同時に線文字Bも消滅したので、ギリシャ文字が発明される前9世紀頃までの文字資料はほとんどありません。そのためこの400年ほどの期間は、実態がよくわからない空白の時代として暗黒時代といわれています。
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