
サルデーニャ島の民族衣装
イタリアの民族衣装は、北から南、そして島嶼部まで本当にバリエーションが豊かです。アルプスの山岳地帯では落ち着いた色と厚手の素材、港町や南部では軽やかで鮮やかな色彩が特徴。そして、なかでもサルデーニャ島の民族衣装は全国的にも特に有名で、色彩や刺繍の豪華さが際立っています。この島では毎年5月、カリアリで行われる聖エフィジオ祭(Sagra di Sant’Efisio)に、村ごとに異なる民族衣装を着た人々が行列を作り、街全体がまるで動く民族衣装博物館のようになるんです。イタリアの民族衣装は「地域ごとの文化的背景」と「祭りや信仰の中で守られる豪華な装飾美」が魅力なんです。
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イタリアの多くの地域では、女性の衣装は白いブラウス、ロングスカート、エプロンにベストやショールを重ねるのが基本。祝祭用は刺繍やレースをふんだんに使い、金や銀のアクセサリーでさらに華やかにします。
サルデーニャ島の女性民族衣装は、深紅や紫、濃紺のスカートに豪華な刺繍入りエプロンを重ね、頭にはレースや刺繍入りのスカーフをかぶります。胸元には重厚な金のネックレスやブローチが光り、村ごとに色や装飾が異なります。聖エフィジオ祭では、この衣装を着た女性たちが花で飾られた牛車とともに街を練り歩きます。
北部トレンティーノ=アルト・アディジェではディアンドル風の衣装、南部シチリアでは軽やかな素材と明るい色の服が多く、気候や文化の影響が色濃く出ています。
サルデーニャ島(カリアリ)の伝統衣装
刺繍入りのベストやスカート、頭巾を合わせた晴れ着。祭礼やパレードで着用され、地域ごとに色や装飾が異なる
出典: Photo by Gianni Careddu / Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0より
イタリアの多くの地域では、男性は白シャツ、ベスト、ジャケットにズボンや半ズボンを合わせ、そこに腰帯や帽子で個性をプラスするスタイルが一般的です。色や装飾の組み合わせは地方ごとに異なり、農村部では素朴で実用的なデザイン、港町や都市部ではより華やかで装飾的なデザインが好まれました。こうした違いは、気候や職業、さらには地域の歴史的背景まで映し出しています。
サルデーニャ島の男性民族衣装は、黒や紺のズボンに刺繍入りのベスト、そして鮮やかな赤い腰帯を巻くのが特徴です。頭には独特なフード型の帽子をかぶり、その形や長さも地域によって少しずつ違います。特に聖エフィジオ祭では、村ごとにベストや帽子のデザインが細かく異なり、模様や色づかいで「この人はどこの村の出身か」がすぐ分かるほど。祭りの日には島中の人々が伝統衣装をまとい、街を練り歩く光景が広がります。
イタリアでは他にも、北西部のアオスタ渓谷で受け継がれている男性の伝統的衣装が有名です。黒いベストとズボンに、白地で赤・緑・黒の縁取りが入ったジャケットを羽織るのが特徴で、この配色はアルプス地方らしい力強さと明るさを表しています。胸元には蝶ネクタイのような飾り布を付け、黒いフェルト帽には花飾りが添えられています。
もともとは祝祭や婚礼など特別な日に着られたもので、実用性よりも華やかさや地域の誇りを示す意味合いが強い衣装なんです。ジャケットや飾りの色使い、帽子の花の種類などには地域や家庭ごとのこだわりがあり、地元の人ならそれだけで着用者の出身地や所属する村が分かるといわれています。
アオスタ渓谷・コーニェの男性民族衣装
赤いベストに白シャツ、黒の帽子を合わせる山地の装い。アオスタ渓谷の町コーニェで受け継がれてきた地方衣装
出典: Elena Tartaglione(著作権者) /Creative Commons CC BY-SA 3.0(画像利用ライセンス)より
北部は寒冷な気候に合わせてウール製のジャケットや厚手のベストを着用し、落ち着いた色合いが多めです。反対に南部では、暑さに対応するため軽やかな綿や麻の服が主流で、涼しげな白や明るい色が好まれます。港町では航海や交易の影響で刺繍入りのシャツやカラフルな腰帯が取り入れられ、まるで地中海の陽光をまとったような華やかさが魅力です。
イタリアの民族衣装は、中世〜ルネサンス期の服飾を基礎に、農村や港町の暮らしに合わせて進化しました。サルデーニャは地中海交易の要所だったため、スペイン、アラブ、カタルーニャなど多様な文化が混ざり、独特の衣装様式が形成されました。
聖エフィジオ祭は1656年、疫病終息への感謝として始まった行事で、サルデーニャ中の村から民族衣装を着た人々がカリアリに集まります。村ごとに異なる刺繍、スカーフ、腰帯、アクセサリーが披露され、その細部にまで地域の誇りが込められています。まさに民族衣装が生きたまま継承される場です。
2017年に行なわれた聖エフィジオ祭の様子。女性の民族衣装に注目
現在では宗教祭、民族舞踊、観光イベントで着用されます。聖エフィジオ祭は世界中から観光客が訪れるため、サルデーニャの衣装を間近で見られる絶好の機会として人気です。
こうして見ると、イタリアの民族衣装は、地方の歴史や信仰、そして人々の誇りが色と刺繍に込められた、動く文化遺産なんです。
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