
広大なカルパチア山脈と、ヨーロッパ屈指の湿地帯であるドナウ・デルタ。ルーマニアという国は、こうした豊かな自然のなかに多様な動物たちが暮らす「ヨーロッパの野生動物の宝庫」とも言われてきました。ヨーロッパでも数少ないヒグマの生息地であり、同時に湿地や草原には色とりどりの鳥たちが舞い降ります。そんなルーマニアの自然の魅力を、今回は動物たちの視点から掘り下げていきましょう。
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山から湿地へと広がる自然環境が、動物たちの命を育んでいます。
ルーマニアの中部を縦断するカルパチア山脈は、ヨーロッパ最大級の原生林を有しています。ブナやモミの深い森には、ヒグマやオオカミ、ヨーロッパオオヤマネコなどの大型哺乳類がひっそりと暮らしており、まさに「ヨーロッパ最後の野生地帯」と呼ばれるゆえんです。
ルーマニア南東部に広がるドナウ・デルタは、ヨーロッパ最大の湿地地帯。ここでは300種以上の鳥類が記録されていて、そのなかには世界的に貴重な種も含まれます。なかでもモモイロペリカンは、この地を代表する鳥として知られています。
ルーマニアでは動物は神話や生活の中でも重要な存在として親しまれてきました。
ドラキュラ伝説でも知られるこの国では、オオカミやコウモリが神秘的な存在として扱われてきました。特にオオカミは、古くから守護霊的な役割を持つ動物として信じられており、今でもそのイメージは強く根づいています。
ルーマニアの農村では、羊やヤギ、牧羊犬などの動物たちが人々の生活と切っても切れない関係にあります。とりわけミオリツァ(Miorița)という羊飼いの叙事詩は、動物との共生をテーマにした代表的な民謡で、ルーマニア人の自然観をよく表しています。
さあ、ここではルーマニアでとくに印象的な動物たちを3種紹介していきましょう。
ルーマニアの国鳥「モモイロペリカン」
ドナウ・デルタに生息するこの巨大な水鳥は、全長150cmを超えることもある大型種。名前の通りほんのりピンクがかった羽毛が特徴で、水上を優雅に滑るように移動します。集団で魚を囲い込んで狩りをする姿は、まさに圧巻です。
ルーマニアはヨーロッパで最もヒグマの個体数が多い国のひとつ。カルパチア山中では、その姿を実際に目撃できるチャンスもあり、エコツーリズムの目玉にもなっています。とはいえ野生動物なので接近は禁物。専門ガイド付きの観察ツアーでそっと見守るのが鉄則です。
ルーマニアの原生林にひっそりと暮らすヨーロッパオオヤマネコは、短く丸い尾と耳の房毛が特徴。絶滅の危機に瀕していたものの、保護活動が功を奏し、近年では徐々に数が回復しています。夜行性でおとなしい性格ですが、強靭なハンターでもあるんです。
このように、ルーマニアには大自然に息づくダイナミックな動物たちが今も健在です。古い伝承や文化と交わりながら、生き生きと暮らす彼らの姿は、まさにルーマニアという国のもうひとつの顔なのです。
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