ロマン主義

ロマン主義の代表作とされるフランス七月革命をテーマにした『民衆を導く自由の女神』(ウジェーヌ・ドラクロワ画)

 

ロマン主義とは、理性を絶対とする啓蒙主義(合理主義)への反発として登場した、情緒や自然・・・つまり「不合理」なものを軽視せず、個人の感性や想像力を大切にしようという思想のことです。ロマンティシズムとも呼びます。19世紀初頭にヨーロッパ各国で見られ、国によってニュアンスに違いはあるものの、おおむねナショナリズムの台頭、国民文学運動の勃興などに繋がっています。

 

 

 

ロマン主義と自然主義との違い

自然主義は19世紀後半に登場した、自然(現実)をありのままにとらえようという啓蒙主義の発展形ともいえる考え方です。そしてロマン主義とは神秘性や創造性などを重視する反啓蒙主義の考え方ですので、啓蒙主義から発展した自然主義とは相容れません。

 

例えば、ロマン主義の芸術家は嘘でも誇張でも「理想化」を重視し、人々を惹きつけるものこそ芸術だと考えますが、自然主義の芸術家は理想化をせず、醜いものも直視し、そのまま描写することこそ素晴らしいと位置づけています。

 

ただ「ありのままをそのままに描写する」自然主義的な芸術は、やはり芸術に疎い大多数の一般人には見ていて面白味がありませんから、その後発展することはありませんでした。

 

ロマン主義と啓蒙主義の違い

ロマン主義と啓蒙主義は水と油です。啓蒙主義というのは、17世紀の科学革命を経て、人間の理性に対する絶対的な信頼が生まれる中で18世紀以降台頭した、「理性」を重んじる思想のことです。それに対してロマン主義というのは、そういった合理主義絶対の風潮に対する反発から生まれた、「感情」を重んじる思想のことですから、相容れるわけがないのです。

 

共通点

ただ啓蒙主義は信仰や権威を押し付けてくる教皇権や絶対王政への反発、ロマン主義は民族主義を抑圧するウィーン体制への反発という形で表出したので、どちらも元は、人間性を縛る古い慣習から逃れようという考え方が根本にあったという点は覚えておきましょう。

 

ロマン主義の現代への影響

私たちが普段見る芸術は、小説であれ、漫画であれ、映画であれ、嘘(フィクション、神秘性)や誇張が盛りに盛られていますが、私たちはそれをわかったうえで大いに楽しんでいます。夢を見させてくれるからですよね。

 

しかし18世紀以降盛り上がった啓蒙主義というのは、理性・合理性至上主義とでもいうべき考え方なので、そういったノリだけの作品は否定されてしまうことになります。そこで「それは感情の生き物である人間のあり方として間違ってないか?」ということで代わって出てきたのがロマン主義なのです。

 

つまりロマン主義は現代芸術の原点であるといえ、ロマン主義という下地がなければ(啓蒙主義がずっと支配的なままであったら)、あらゆる国民文学は当然のこと、もっと身近なところでいえば、ファンタジーがふんだんに盛り込まれたディズニーやジブリなどの作品も、生まれてこなかったかもしれないのです。