サラエボ事件を受けて、オーストリア政府は、セルビア政府の関与を疑い、セルビアに最後通牒を突きつけた後、宣戦布告しています。確かに本来ならば、「オーストリアとセルビアの戦争」で完結していなければおかしいといえますね。しかしオーストリアｖｓセルビアという構図はあくまで表面上のもの。

オーストリアは三国同盟（ドイツとイタリア）を後ろ盾に持っていて、セルビアはバルカン諸国の独立を援助する三国協商（ロシア・イギリス・フランス）の後ろ盾を持っていました。

つまりオーストリアとセルビアの戦端が開かれた瞬間、自動的に当時の同盟関係から、三国同盟（オーストリア・ドイツ・イタリア）と三国協商（ロシア・イギリス・フランス）の戦争が成立することとなります、

当時のバルカン半島はこれら西欧列強による覇権争いの場と化していて、「ヨーロッパの火薬庫」と呼ばれるほど、本当にギリギリの均衡で「平和」が保たれていたのです。

その均衡を見事に崩したのがサラエボ事件なのであり、この事件をきっかけに全ヨーロッパに火の手が燃え広がる、第一次世界大戦の火蓋が切って落とされることになってしまったのです。

ヨーロッパの火薬庫の風刺画。帝国主義諸国がバルカン半島の民族を支援すると同時に、自らの権益拡大を狙っている様子を皮肉っている。