ギリシャ神話における「創造神」とは?

多くの神話には原初の神、創造神が存在します。しかしギリシア神話では、世界、天地が神によってつくられるというより、「神が天地そのもの」であるため、神々の誕生と世界の誕生は表裏一体です。

 

 

原初の神カオス

Wenceslaus Hollar (1607〜1677)により描かれたカオス

 

カオスはギリシア神話の原初の神です。名は「空虚、裂け目、深淵」などを意味するギリシア語で、吟遊詩人オルフェウスはカオスのことを「すべての存在を超越する無限の象徴」とうたっています。

 

カオスから始まる世界創造

ギリシア神話では、世界は「カオス(混沌)」から、大地の神「ガイア」が生まれたことに始まるされています。ギリシア人は、まず「天地の創造が人々の運命を左右する」と考えたからです。そしてギリシア神話における神々の物語は、ガイアから生まれた天空神ウラノスが、ガイアとの間にたくさんの子をもうけたことに始まるのです。

 

吟遊詩人ヘシオドスによる叙情詩『神統記』では、「世界が生まれるには、まず世界が存在できる空間が必要であり、世界生誕以前には何もない無の空間が存在した。それがカオスである。」と解説されています。

 

カオスから生まれた世界

カオスからは幽冥(薄暗がり)の神エレボス、夜の神ニュクス、更にニュクスから大気の神アイテールと昼の神ヘーメラーが生まれたとされます。古代の人は、天地、昼夜が出来上がって「世界」が始まったと考えていたのです。

 

カオスから生まれたこれらの神々は、ギリシア神話における世界の基盤となる要素を象徴しています。天地の創造と共に、昼と夜、光と闇、生と死といった二元性の概念も生まれました。これらは人間の世界観や哲学の根底に深く根ざし、ギリシア文化の発展に大きな影響を与えたのです。

 

神々の系譜と世界の秩序

ガイアとウラノスの間に生まれた神々は、さらに多くの子孫をもうけ、ギリシア神話における神々の系譜が広がっていきました。この系譜には、ゼウスやポセイドン、ハデスといったオリンポスの十二神が含まれます。彼らは神々の世界を治め、人間界に影響を与える様々な自然現象や道徳的な原則を司りました。

 

この神々の物語は、世界の秩序とバランスを表現しています。彼らの行動はしばしば人間の営みと交錯し、神々の愛情、嫉妬、争いが、自然界の変化や人間社会の出来事に結びつけられて解釈されました。

 

神話における人間の役割

ギリシア神話は、人間と神々の関係を深く探求しています。神々は人間の行動に影響を与え、時には直接的に介入することもありますが、人間は自らの運命を切り開くために努力する必要がありました。この神話における人間の役割は、古代ギリシア人にとって自己認識と自己決定の重要な要素であったことが窺えます。

 

また、ギリシア神話は、人間の道徳性や知恵、勇気といった特質を賞賛し、人間の英雄たちはしばしば神々と競い合う姿が描かれています。これらの物語は、人間の可能性と限界を示唆し、後の西洋文化や文学に多大な影響を与えました。

 

神話の教訓と影響

ギリシア神話は、神々の物語を通じて、世界の誕生から秩序の確立、人間の存在意義までを描いています。これらの神話は、道徳的、哲学的教訓を提供し、文化や芸術に深い影響を与え続けています。特に、自然現象や人間の心理を神々の物語で象徴化することで、古代ギリシア人は自然界と人間社会の複雑な関係を理解しようと試みたのです。