地中海性気候の家の特徴|なぜ白い家が多いの?

ギリシャ・サントリーニの白塗りの家
石灰を含むこの白塗りは、日射熱を抑えて室内を涼しく保ち、衛生面でも石灰の殺菌効果で清潔を保つ役割を果たしている

出典:Photo by Alan bron / Wikimedia Commons Public domainより

 

地中海性気候といえば、真っ青な空と強い日差し、そして目にまぶしいほど真っ白な壁の家々──そんな風景が思い浮かびますよね。でも、なぜこの地域では「白い家」が当たり前のように建てられているのでしょうか?
あれって実は見た目の美しさだけではなく、この気候ならではの“暮らしの知恵”がしっかり詰まっているんです。今回は、地中海性気候の家の特徴を、建築と気候の関係からひも解いてみましょう。

 

 

白い壁の理由

まずはなんといっても、地中海沿岸でよく見られる白い壁の家。これは単なる装飾ではなく、厳しい日差しと暑さのなかで暮らすための、とても合理的な工夫だったのです。

 

日差しを反射するため

地中海性気候の夏は、連日カンカン照り。そんななかで黒や濃い色の壁にしてしまうと、熱をどんどん吸収して家の中まで暑くなってしまいます。白は光と熱を反射する性質があるので、家の外壁を白くすることで室内温度の上昇をおさえる効果があるんです。

 

石灰で塗る伝統

昔の地中海沿岸の家は、石灰(ライム)で塗られていました。これも白い色になる理由の一つ。石灰には抗菌・防虫作用があるうえ、太陽の熱でひび割れても修復しやすく、手軽に塗りなおせるというメリットもありました。つまり白い壁は、経済的かつ機能的でもあったというわけですね。

 

室内の工夫

外見の美しさだけでなく、家の中にも地中海性気候に合った工夫がたくさんあります。とくに夏を涼しく過ごす知恵が、家のつくりにたっぷり詰まっているんです。

 

厚い壁と小さな窓

地中海地域の伝統的な家は、壁がとても分厚いのが特徴です。この厚さが断熱材のような役割を果たし、外の暑さを室内に伝えにくくしてくれます。また、窓を小さくして日差しを遮るのもポイント。明るさよりも涼しさを重視した設計なんですね。

 

床は石やタイル

暑い夏でも足元から涼しさを感じられるように、床材には石やタイルがよく使われています。これらは熱をため込みにくく、冷たさをキープしやすい素材なので、室内の体感温度を下げるのにぴったり。裸足で歩いても気持ちいいんです。

 

空間のつかい方

家のつくり方だけでなく、空間そのものの使い方にも地中海性気候特有の工夫が見られます。暮らしの中でどう暑さと向き合ってきたか──それが垣間見えるポイントです。

 

パティオ(中庭)の活用

スペインやギリシャ、南イタリアなどでは、パティオ(中庭)がとても重要な空間です。外気を取り込みつつ直射日光を避けられるこの場所は、風通しが良く、夏でも比較的涼しい。洗濯や調理、食事などもパティオで行われることが多いんです。

 

屋根のテラスや日除け

強い日差しを遮るために、庇(ひさし)やアーケード、シェードといった日除け設備も大切。また、屋根の上にテラスを設けることで風通しのよい場所で夜を過ごす工夫もあります。暑い時期にはここで涼みながら寝る人も少なくなかったとか。

 

このように、地中海性気候における「白い家」は、暑さとのたたかいの中で生まれた“生きるための知恵”のかたまりなんですね。見た目の美しさの裏には、長い歴史の中で育まれた工夫と知恵がぎゅっと詰まっているというわけです。