
タイガ(針葉樹林)
大陸性気候(Dfb・Dfc)で典型の植生で、ロシアに多く見られる。
ヨーロッパ内陸部に広がる大陸性気候の地域では、寒暖差の大きな気候が植物たちの成長にも大きく関わっています。乾燥した空気、短い夏、長く厳しい冬──こうした環境下で生きる植物はどのように適応しているのでしょうか?今回は、この気候特有の「植生」に注目して、生育期の長さや代表的な植生の特徴を整理してみましょう。
|
|
|
|
植物が育つには、気温と湿度がある程度そろっていなければいけません。では、大陸性気候では、植物にとっての「育ちやすい時期」はどうなっているのでしょう?
ヨーロッパの大陸性気候帯では、4月〜9月ごろまでが主な生育期とされます。これは気温が日中10℃以上になる時期にあたり、短くとも5か月ほどが植物の活動期間。逆に、それ以外の時期はほとんど植物が休眠状態となり、冬枯れの風景が広がります。
春になった途端、気温が一気に上がるのが大陸性気候の特徴。これにあわせて、植物たちも急ピッチで成長します。たとえば草原地帯では、春から初夏にかけて一気に草丈が伸び、夏の終わりにはすでに枯れ始めるというサイクルが一般的です。
ではこの地域では、どんな植物が生き残り、どのような風景を作り出しているのでしょうか?その代表例を見てみましょう。
中央・東ヨーロッパの大陸性気候帯では、ステップ(草原)と混交林が主な景観を形づくっています。ステップには、イネ科やマメ科の乾燥に強い多年草が広がり、混交林ではカエデ、ブナ、シラカバといった広葉樹と、モミやトウヒなどの針葉樹が混在。これは、冬に落葉することで寒さをしのぐ広葉樹と、常緑で耐寒性に優れる針葉樹との、共存のかたちなんですね。
この地域の土壌は、南部では黒土(チェルノーゼム)が見られ、これが草原性植物の生育を支えています。北へいくにつれてポドゾル(土壌が白っぽい酸性のもの)が多くなり、これに対応した酸性土壌に強い針葉樹が目立つようになります。
黒土(チェルノーゼム)の断面
新石器時代から栽培に最適で肥沃な土壌だったが、ソ連時代の集団化農業などにより劣化が進んだ
出典:USDA(パブリックドメイン)より
最後に、気候変動がこの地域の植生にどんな影響をもたらしているのか、少し先の視点から見ていきましょう。
ここ数十年で、ヨーロッパ東部の草原地域ではさらなる乾燥化が進み、ステップ植物の生育域が北へ後退する傾向がみられています。特にモルドバやルーマニアでは、植生の劣化や砂漠化の兆候も報告されています。
これに対応するため、干ばつに強い外来種の導入や、伝統的な在来種の保護が進められています。また一部地域では、農業と森林の複合利用(アグロフォレストリー)によって、生態系を維持しつつ収穫も得られるような取り組みが始まっています。
このように、大陸性気候のもとで育つ植物たちは、短い生育期と厳しい気候にあわせて進化してきたんですね。草原と森林が織りなすこの風景は、まさに自然と共生する知恵のたまものなのです。
|
|
|
|