
デンマークの国土
ヨーロッパ北部に位置するデンマークは、「北欧の玄関口」として古くから人と物の行き交う重要な地でした。北海とバルト海に挟まれ、無数の島々と半島が織りなす複雑な海岸線、そして低くてなだらかな国土。そこに根づいた暮らしは、常に海と風と共にありました。今回は、そんなデンマークの地理的特徴を「地形」「気候」「環境」の3つの視点から、わかりやすくかみ砕いて解説します。
デンマークの地形は、平坦で湿潤、そして海と切っても切れない構造をしています。
国土の大部分はユトランド半島にありますが、首都コペンハーゲンがあるシェラン島をはじめ、大・小400以上の島々が散らばっていて、そのうち人が住んでいるのは約70島ほど。こうした多島国家であることが、交通や文化の多様性にも影響を与えています。
国内最高地点でも標高は約170メートルほどしかなく、全体的に平らで緩やかな起伏が広がっています。これは氷河が運んだ堆積物で形成された氷河性地形によるもの。農地としての利用がしやすく、古くから農業が盛んな土地でもあります。
海に囲まれた国ならではの、やわらかく移ろいやすい気候が特徴です。
デンマークのほとんどの地域は西岸海洋性気候(Cfb)に分類され、夏は涼しく冬は温暖というのが基本スタイル。気温の年較差が小さく、年間を通して穏やかな気温が保たれています。
北海から吹き込む偏西風の影響で、風が強く、天気が変わりやすいのが特徴。年間の降水日数は150日以上とも言われ、晴天率はあまり高くありません。これにともなって、屋内で過ごす時間や、家庭での「ヒュッゲ(居心地の良い時間)」の価値が大きくなっていったんですね。
人と自然の共生がデンマーク社会の根底にあります。
風の強さと海の近さを活かして、風力発電大国としても有名。沿岸部や海上には多数の風車が並び、再生可能エネルギーの比率は50%以上にも達しています。環境配慮と地理的条件が見事にかみ合った例ですね。
ユトランド半島の西側やリムフィヨルド周辺には、潮の干満を利用した湿地や干拓地が点在。これらのエリアは、かつて洪水や高潮に悩まされた歴史を持つ一方で、現在ではラムサール条約で保護される湿地帯として、渡り鳥などの生息地になっています。
このようにデンマークは、低くて平らな国土と、海に囲まれた環境がすべての基盤。風と水と向き合ってきた歴史が、人々の暮らし方や価値観に深く根づいているわけです。
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