
「産業革命」と「工業化」、似ているようでちょっと違うこの2つの言葉。日常的にはごっちゃにされがちですが、じつは意味合いも使われる文脈もぜんぜん違います。今回はこの2つの違いをはっきり整理して、どう関係しているのか、どう区別して理解すればいいのかをわかりやすくかみ砕いて解説していきます。
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まずは「産業革命」ってそもそも何だったのか、時代背景からおさらいしてみましょう。
「産業革命」とは、18世紀後半から19世紀にかけて、イギリスで始まった生産技術と経済構造の大変化のこと。蒸気機関や紡績機の発明によって、それまで手作業中心だったものづくりが、一気に機械化・工場化されていきました。
この革命のインパクトは、単に「道具が便利になった」どころじゃありません。農村から都市へ人口が流れ、資本家と労働者という新しい階級社会が生まれ、交通や貿易の仕組みも一変。「産業革命」は、それまでの生活や経済のあり方そのものをひっくり返した一大事件だったんです。
よく「第一次産業革命」「第二次産業革命」と分けられるように、蒸気機関から電気、そして化学や重工業へと、革命は段階的に進みました。つまり、「産業革命」は“ある一時期の現象”として語られることが多いのが特徴です。
では今度は「工業化」について見ていきましょう。こっちは「革命」とはちょっと違う性質を持っているんです。
「工業化」とは、社会や経済の中心が農業から工業へとシフトしていくこと。つまり「ものを作る」手段や体制が、大きく変化していくプロセス全体を指す言葉です。
「産業革命」が18〜19世紀のヨーロッパを中心に語られるのに対し、「工業化」は国や地域によって時期がバラバラ。たとえば日本の工業化は明治時代から始まり、アフリカや東南アジアでは20世紀後半以降に進行しました。つまり、工業化はいつでも、どこでも起こりうる現象なんですね。
「工業化」はときに、政府や国家によって計画的に推進されることがあります。たとえばソ連の五カ年計画や韓国の輸出志向型工業化など、経済発展の柱として意識的に「工業化」が行われる例も多いんです。
じゃあ「産業革命」と「工業化」って、どういう関係で、何が決定的に違うのでしょうか?
簡単に言えば、「産業革命」は工業化のきっかけとなった出来事であり、「工業化」はその後もずっと続いている流れ、という違いがあります。つまり、産業革命は“歴史上の一大事件”で、工業化は“今なお進行中の現象”ということ。
技術革新、都市化、資本主義──これらの土台を築いたのが産業革命でした。つまり、工業化の前提条件を用意したのが産業革命なんです。両者は時間軸の中でつながっていて、一方がなければ他方も成り立たなかったわけですね。
面白いのは、現代になると「工業化」という言葉のほうが汎用性が高く使われるようになっていること。開発途上国の経済政策などでも「工業化が進む」と言うように、産業革命に比べて「今っぽい」言葉になってきているんです。
このように、「産業革命」は歴史的な特定の出来事、「工業化」は長期的かつ広範囲な社会変化。どちらも現代社会を形作るうえで欠かせないキーワードですが、その性質や使われ方には大きな違いがあるんですね。
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