大航海時代に行われた東半球と西半球における人・物・動物・食物などの大規模な移動のことを「コロンブス交換」と呼びます。交換されたのは作物や金銀など有益なものだけでなく、コレラやインフルエンザ、マラリア、ペスト、麻疹など恐ろしい感染症も含まれていました。
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大航海時代の開幕にともない、新大陸アメリカへ、ヨーロッパやアフリカ由来の感染症がもたらされました。その影響で先住民インディアンは人口が激減し、それまで彼らを労働力として使役していた鉱山や大農場は深刻な労働力不足に陥ってしまいます(※1)。また、15世紀半ばにはヨーロッパからもたらされた感染症がメキシコで大流行し、中部地方の先住民の8割が死亡する惨事に繋がっています。
逆にアメリカ大陸からヨーロッパへは梅毒が持ち込まれ、大航海時代を通して世界中に蔓延するようになりました。
※1…先住民の代わりにアフリカの黒人奴隷が使役されるようになり、ヨーロッパ(毛織物・武器など)→アフリカ(黒人奴隷)→アメリカ(砂糖・綿花・タバコなど)という三角貿易が開始されたことは歴史的に重要です。
大航海時代の船旅は数か月にも及び、船内の衛生状態は非常に悪かったため、疫病の発生と拡散が容易に起こりました。狭い船内での密集した生活は、感染症の拡大を助長しました。また、飲料水や食糧の不足、劣悪な保存状態が船員の体力を低下させ、病気に対する抵抗力も弱まっていました。
ヨーロッパ人が新大陸に到達し、先住民と接触した際、先住民はヨーロッパからもたらされた疫病に対する免疫がありませんでした。そのため、感染症は急速に広まり、多くの先住民が命を落としました。同様に、ヨーロッパ人も新大陸から持ち帰った病気に対して免疫がなく、ヨーロッパでの大規模な流行を引き起こしました。
天然痘はヨーロッパから新大陸に持ち込まれ、多くの先住民の命を奪いました。特にメキシコのアステカ帝国やペルーのインカ帝国では、天然痘の大流行が人口の激減と文明の衰退を招きました。
インフルエンザや麻疹もヨーロッパから新大陸にもたらされ、これらの病気も多くの先住民を苦しめました。感染症による死亡率は非常に高く、社会構造に深刻な影響を与えました。
梅毒は新大陸からヨーロッパに持ち帰られた病気の一つであり、16世紀にはヨーロッパ中に広がりました。梅毒の流行は、社会全体に大きな健康問題を引き起こし、治療法が確立されるまで長い時間を要しました。
大航海時代の開幕とともに始まった疫病流行は、人類史における大きな転換点となりました。ヨーロッパ人の世界進出とともに、疫病もまた地球規模で拡散し、多くの命が失われました。これらの疫病流行は、文化や社会構造の変化をもたらし、歴史の進展に大きな影響を与えました。現代においても、当時の疫病流行から学ぶべき教訓は多く、グローバルな視点での公衆衛生の重要性を改めて認識する必要があります。
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