北欧神話で最強の神といえば?

モルテン・エスキル・ヴィンゲ作『トールと巨人の戦い』(1872年)

 

北欧神話で最強と称される神は、最高神オーディンの息子にして雷の神トールです。トールは赤髪・赤髭で、燃えるような瞳を持つ大男で、その力はアースガルズの全神々の総力以上と言われています。二匹の黒山羊が牽く戦車に乗り、巨人と戦うための武器ミョルニル(鉄槌)は、投げた相手に百発百中、しかも一撃で倒すことができるとされているのです。

 

 

 

最強の神の敗北

巨人の王ウトガルド・ロキは、巨人の国を旅していたトールに幻術をかけて、自分の館にまんまと誘い込みます。そして幻術をかけたままトールに以下のような、一見簡単そうな要求をふっかけるのです。

 

「角杯に入った酒を飲み干せ」

トールに渡された角杯は実は海に繋がっていたため、飲み干せるわけはありませんでした。(それでも相当量減らしたそうです)

 

「足元の猫を持ち上げろ」

トールは持ち上げますが、ほんの少し前足が動いただけでした。幻術で猫に見せていましたが、実は世界を一周するほどの大きさの蛇(ヨルムンガンド)を持ち上げようとしていたのです。

 

「老婆との相撲をとれ」

老婆相手なので楽勝だと思いきや、老婆の正体は「老い」そのもの。いくら神様と言えど老いには勝てませんでした。

 

というように、最強の神トールは上記のすべての腕試しに敗北しました。しかしウトガルド・ロキは勝ちはしたものの、トールの規格外の力を見て「お前とは二度と会わぬほうがお互いのためだ」と忽然と姿を消したのだそうです。

 

最強の神の最期

世界の終末の日(ラグナロク)でヨルムンガンド海から陸に上がり、世界を壊し始めました。それを阻止しようと応戦したのがトールで、激しい戦いの末、ミョルニルにより頭を潰し、ヨルムンガンドを倒すことに成功。しかしトールもヨルムンガンドの毒によって倒れ、最強の神は命を落としてしまったのです。