
ヨーロッパの「西欧」と「東欧」の境界については、国や機関によって解釈が異なります。ここでは国際連合とワールドファクトブック、および歴史・文化解釈に基づいた西欧・東欧区分について紹介しています。
国際連合によるヨーロッパ地域の4分類では、ヨーロッパの西欧・東欧・北欧・南欧は以下のような区分けになっています。
水色:西欧諸国 オレンジ色:東欧諸国 緑色:南欧諸国 青色:北欧諸国
未だに、かつてからの資本主義諸国を西ヨーロッパ(冷戦時代の西側諸国)、旧社会主義諸国(冷戦時代の東側諸国)を東ヨーロッパと呼ぶ場合がありますが、これは冷戦時代に宗主国(西欧ならアメリカ、東欧ならソ連)からの影響を強く受ける中で、西側と東側で文化的な剥離も生じていることが背景にあります。
※冷戦時代、ロシアはソ連、チェコおよびスロバキアはチェコスロバキアという一つの国でした。
アメリカCIAが発行するワールドファクトブックは、ヨーロッパの西欧と東欧を以下のように分類しています。
水色地域:西側諸国 橙色地域:東側諸国
ワールドファクトブックは、アメリカ中央情報局(CIA)が公開する年次出版物で、世界中の国々と地域に関する概要、統計情報、地政学的データを収集したものです。この本は、国の政治、経済、人口統計、地理、通信、軍事に関するデータや、国際関係に関する情報を提供し、研究者、政策立案者、教育者、学生、または単に世界に関する詳細な情報を求める一般の人々に幅広く利用されています。
ワールドファクトブックが国連とは異なる分類をしていることについては、各組織が持つ異なる目的と基準によるものです。国連は主に政治的、経済的基準と国際的な合意に基づいて地域を分類しますが、CIAのワールドファクトブックはしばしば文化的、地理的な要素に基づき国々を区分していることがあります。たとえば、ワールドファクトブックでは、地理的な位置や歴史的な背景により、ヨーロッパの特定の国々を「西欧」または「東欧」と分けている場合があり、これは国連の地域グループ分けとは異なることがあるのです。。
これにより、ワールドファクトブックの分類は、時にはより地域的な特性や歴史的な文脈を反映することがあるため、国際的な合意に基づく国連の分類とは異なる視点を提供することになります。そのため、世界についてのさまざまな分析や意思決定を行う際には、これらの情報源の観点を理解しておくことが重要ですね。
ヨーロッパは、中世に教会が東西に分裂した影響から、カトリック文化圏=西欧(スペイン、フランス、イタリア、ドイツなど)、正教文化圏=東欧(ロシア、ギリシャ、ルーマニア、ブルガリアなど)という分類をすることもできます。
ヨーロッパの宗教的及び文化的地域分けは、歴史的な出来事や社会的発展に根ざしており、中世の大きな教会の分裂、すなわち1054年の東西教会の分裂は、この分け方に大きく寄与しています。この分裂は、ローマカトリック教会と東方正教会の間の宗教的及び文化的な違いを明確にしました。
西欧のカトリック文化圏は、1054年の教会の分裂以前からローマの影響を受けて発展してきました。カトリック教会の本部がローマにあることから、スペイン、フランス、イタリア、ドイツの南部および中部、ポーランド、アイルランドなど多くの国がこれに含まれます。これらの国々では、ローマカトリック教会が社会的、文化的な基盤を形成し、各国の芸術、音楽、建築、教育システム、祝日の慶祝方法にまで影響を与えています。カトリック文化圏では、キリスト教の教義や儀式が人々の日常生活や価値観に深く根ざしており、国のアイデンティティ形成にも大きく寄与しています。
一方、正教文化圏に属する国々は、かつてビザンティン帝国の影響下にあり、東方正教会がその文化的及び宗教的な中心となっていました。ロシア、ギリシャ、ルーマニア、ブルガリアなどがこの文化圏に含まれます。これらの国々では、正教会が重要な役割を果たし、独自の宗教的アイコン、建築スタイル、典礼音楽、および宗教的伝統を発展させてきました。正教圏の国々では、宗教的な祭日や伝統が、特に共同体の結束力となっており、民族的なアイデンティティの源泉ともなっています。
これらの宗教的文化圏は、単に信仰の違いを超えて、各国の歴史的な発展、国際関係、そして現在における社会的・政治的な動向にも影響を及ぼしています。
ヨーロッパの西欧と東欧の分類には複数の基準があり、それぞれが異なる歴史的、文化的、宗教的背景を反映しています。国連やワールドファクトブックの分類の他、冷戦時代の名残を考慮した資本主義国と社会主義国の分け方の他、中世の東西教会の分裂を基にした宗教分布による分類方法もあることを知っておきましょう。
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